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導入企業から見た裁量労働制のメリットとデメリットとは?

企業にとって生産性の向上は大きな課題であるのですが、実現に苦労しているところは多いです。さまざまな方向から生産性を改善させるための取り組みが行われています。それは働き方改革と呼ばれており、従来とは異なるスタイルの働き方が模索されているのです。その中でも注目されている方法として裁量労働制があります。実際に裁量労働制を導入して成功した企業があるため、導入を検討している経営者は多いです。しかし、新しい制度を導入するならば、詳しい内容やメリット・デメリットを理解しておくことは大切でしょう。事前に十分な情報を集めて、知識を得たうえで検討するのです。そこで、裁量労働制とはどのような制度なのか、どんなメリットやデメリットがあるのかなどを解説します。

働き方改革が推進されている中で注目されている裁量労働制とは?

裁量労働制とは1988年に施行されている制度であり、近年注目を集めています。労働者がどれだけ働いたのかに関係なく、会社があらかじめ定めている時間だけ労働者が働いたとみなして給与を支払う制度であり、みなし労働時間制のひとつです。最終的な成果が評価の対象となっているため、同じ成果をあげるためにどのような働き方をするのかも自由に決められます。労働者は、自分の裁量で始業時間や就業時間などを選択して働くのです。そのため、裁量労働制を導入した企業は、社員の実労働時間や出社・退社の時間を定めることはできません。業務遂行の手段や時間配分などは、すべて労働者に委ねることになるのです。もし、みなし労働時間を8時間とすると、6時間働いても12時間働いても、給与は変わりません。また、みなし労働時間が1日8時間を超える場合は、時間外手当を支払う必要があるため、残業の概念も存在します。休日や深夜の勤務に対しても残業手当を支払う必要があるのです。

裁量労働制は、特定の専門業務では画一的な働き方を強いるよりも労働者の裁量で働き方を決めさせたほうが合理的であるという考え方がベースにありました。それが、近年は少子高齢化が進み労働力人口が減少しているため、労働力を確保するための方法として裁量労働制が注目されるようになったのです。本来、日本の法律では1日8時間、1週間40時間の労働時間が基本とされているのですが、裁量労働制は例外を認められています。ただし、対象となる職種や業務が限定されているため、条件を満たしていないと企業は裁量労働制を活用できません。

裁量労働制と事業場外みなし労働時間制・フレックスタイム制

裁量労働制とよく似た制度として事業場外みなし労働時間制とフレックスタイム制がありますが、これらは異なる制度です。裁量労働制は成果主義であり、定められた成果を上げられるならば働き方は自由に決められます。一方、事業場外みなし労働時間制は、労働時間の算定が困難な業務で適用される制度です。労働時間を計算するのが難しいために、その基準を定めることを目的とした制度であり、成果主義とは異なります。たとえば、営業販売や新聞記者、搭乗員などの仕事では、事業場外みなし労働時間制が使える可能性は高いです。会社の外で働く仕事では、労働時間の管理が難しいため、一定時間労働したとみなすことに妥当性があります。

また、フレックスタイム制とは、労働時間帯に自由度を与えるための制度であり、成果主義とは違います。一定期間内の1週あたりの労働時間が平均して40時間以内になっていれば、特定の日や週に法定労働時間を超えていても認められる制度です。従業員は自由に出退勤の時間を決められるのですが、コアタイムの間はオフィスにいなければいけません。コアタイムは会社が定めたものであり、従業員が決めることはできないのです。そのため、裁量労働制よりも労働者の裁量は小さいものとなっています。また、フレックスタイム制は対象業務が限定されていません。そのため、ワークライフバランスを推進するために会社が気軽に導入できる制度です。

専門業務型裁量労働制を導入することができる19種の業務

専門業務型裁量労働制では、業務の性質上、業務遂行の方法や手段、時間配分などを労働者の裁量にゆだねる必要のある業務が定められています。そして、対象となる業務において、労働者を業務に就かせるときに、あらかじめ定めた時間働いたものとみなすことができるのです。厚生労働省令及び厚生労働大臣告示によって定められた全部で19の業務が専門業務型裁量労働制の対象となっており、それ以外の業務では適用できません。対象業務のひとつに、「新商品、新技術の研究開発又は人文科学、自然科学に関する研究の業務」があります。たとえば、メーカーで材料や製品、生産などの研究開発に携わっている労働者です。業務の性質から、始業時間や就業時間を労働者が決めることに合理性があると認められています。

公認会計士や弁護士、建築士、税理士などの業務も、専門業務型裁量労働制の対象です。さらに、デザイナーやコピーライターなどクリエイティブ業界の業務に関しても、専門業務型の対象とされています。基本的に成果主義であり、仕事の結果が重視されて、仕事のスタイルが個人の裁量に任せられているような業務が、専門業務型の対象となっているのです。ただし、19種の業務に就いていたとしても、会社が正式な手続きをしなければ、専門業務型裁量労働制は適用されません。

企画業務型裁量労働制を導入することができる業務の条件

企画業務型裁量労働制とは、企業の部署において一定範囲の業務に従事している労働者が、業務の方法や時間配分などの決定を自身の裁量で行え、成果を重視することで生産性や業務効率の向上を図る制度のことです。企画業務型裁量労働制の対象となる業務は、4つの要件に該当している必要があります。ひとつは、事業の運営に関する事項についての業務であることです。また、その仕事内容が企画や立案、調査、分析の業務であることも条件に含まれます。そして、その業務を遂行するための方法を労働者の裁量にゆだねる必要のある業務であることです。さらに、その業務の遂行手段や時間配分について、使用者が具体的な指示を出してはいけません。これらを満たしている業務において、企画業務型裁量労働制が認められます。

専門業務型裁量労働制との違いとしては、企画業務型は事務的業務が対象になっている点です。また、専門業務型よりも対象となる業務が明確になっていないため、手続きはより複雑になっています。企画業務型が認められるのは、担当部署の調査や分析を行い、企業の経営に大きく関わる計画を策定するような業務です。そのため、ルーティンワークを毎日こなすだけの仕事には適用されません。また、経営に関する会議に関わっていたとしても、単なる事務作業であり企業経営に直接影響しないようなものであれば、対象業務にはならないでしょう。

専門業務型裁量労働制を導入するときに必要になる手続き

専門業務型裁量労働制を企業が導入するためには、決められた手続きが必要となります。その内容は、労働者側と対象業務などの事項について決めた労使協定を結んで、さらに労働基準監督署に届け出をすることです。したがって、労働者側が認めなければ、専門業務型裁量労働制を導入することはできません。労使協定がなく裁量労働制を取り入れても、それは無効となるのです。労使協定とは、労働者と使用者が書面により契約する協定のことであり、その際には労使協定書が作成されます。労使協定の中には、労働基準監督署への届け出義務のあるものと、協定締結のみで成立するものがあります。専門業務型裁量労働制の場合は、労働基準監督署に提出する義務があり、そこで内容がチェックされるのです。

実際に届け出が認められても、その後で裁量労働制が無効と判断されることもあります。たとえば、労働者が労働基準監督署に訴えて、労働の実態調査が行われる中で、裁量労働制の対象業務には該当しないと認定されることがあるのです。労働基準監督署は、常に企業の労働の実態を監視しており、必要があれば勧告や指導をしています。労働基準監督署による勧告や指導には強制力はないのですが、法律違反をしているのであれば、悪質なケースでは罰金や懲役刑の可能性もあるのです。専門業務型裁量労働制の手続きをする際には、条件を満たしているか確認し、それを守ることが求められます。

企画業務型裁量労働制を導入するときに必要になる手続き

企画業務型裁量労働制を導入する場合は、専門業務型よりも手続きが複雑になります。労使委員会を設置して、5分の4以上の多数決によって、対象業務の具体的範囲などの事項に関する決議をしなければいけません。さらに、決議内容を所轄の労働基準監督署に提出して、それが受理される必要があるのです。決議する事項には、対象業務や労働者の具体的範囲、労働時間としてみなす時間、決議の有効期限などが含まれます。また、本人の同意の取得を得ること、不同意者に対して不利益取扱いをしないことも約束しなければいけません。決議の有効期限については、3年以内にすることが望ましいとされています。

労使委員会とは、企画業務型裁量労働制に関する組織であり、平成10年に設けられました。労使委員会を設置するためには満たすべき条件が6つ定められています。労働者と使用者を代表する委員によって構成されており、労働側委員は半数を占めている必要があります。したがって、企画業務型裁量労働制を導入するためには、労働者側を納得させることが大切です。5分の4以上の多数決による承認を得られなければ、その時点で手続きを進められなくなるでしょう。裁量労働制の導入に根拠があり、労働者側にメリットがあることを説明するためには、しっかりと時間をかけて準備する必要があります。

導入する企業の視点で見た裁量労働制のメリットとは?

企業が裁量労働制を導入することには、たくさんのメリットがあります。まず、労働者の給与の計算がしやすくなり、人件費のコスト管理が容易になるのです。ただし、休日出勤や深夜出勤などがあれば、残業代が発生します。それでも、人件費をある程度固定して考えられるため、中小企業にとってはコスト管理の負担を減らせるのは大きなメリットです。また、社員の生産性を向上させることができ、結果的に人件費の削減につながります。社員にとっては、仕事を早く終わらせるほうが得するため、生産性を上げるモチベーションになるのです。社員が仕事とプライベートのバランスを取りやすくなり、心身の健康を維持することにもつながります。そうなれば、より仕事に力を入れて取り組めるようになり、大きな成果を上げやすくなるでしょう。また、生産性が低いのに長時間働く社員に多くの給与を支払うことを避けられるメリットもあります。

導入する企業の視点で見る裁量労働制のデメリットとは?

裁量労働制を導入するためには手続きが必要であり、その負担が大きいのはデメリットとなります。特に企画業務型の場合は、労使委員会を設置して運営ルールを定め、複数の事項について決議する必要があるのです。しかも、多数決により決議が認められる必要があるため、上手くいかないケースもあります。最終的には、決議された内容を所定の様式にしたがって労働基準監督署へと提出する義務もあり、そこで受理されないこともあるのです。導入したいと考えても、気軽に取り入れることができる制度ではありません。そのため、導入を検討するならば、ある程度の覚悟が必要とされます。

また、実際に導入した場合には、これまでよりも労働管理が難しくなるでしょう。それぞれの労働者が自分の裁量で働くことになり、始業時間や就業時間はみんなバラバラになります。一対一で話をしたりミーティングで集まったりすることも難しくなるのです。また、みなし時間に合わせた仕事を割り振る必要があり、管理職に大きな負担がかかります。管理職のノウハウや人材が不足している企業では、労働管理が上手くいかないのです。また、チームとして過ごす時間が減ることによって、文化や組織の熟成がしにくい可能性があります。それぞれが個人で仕事をするため、企業らしさが熟成される土壌がなくなってしまうのです。これは小さな企業にとってはデメリットになりやすいため、社員がコミュニケーションをする場を設けるなど工夫が必要となります。

まとめ

働き方改革が推進されている中で裁量労働制はとても注目されています。労働者に業務遂行や時間配分をゆだねることで、生産性が向上し、人件費のコスト管理が容易になるといったメリットがあるのです。ただし、企業側は実労働時間や出社・退社の時間を決められなくなります。労働管理が難しくなり、文化熟成や組織づくりの弊害にもなりやすいというデメリットもあります。また、所定の手続きを経る必要があり、その負担が大きいことも考えなければいけません。このように、裁量労働制にはメリットやデメリットがあるため、よく考えて導入を検討しましょう。

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