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在宅勤務における裁量労働制のメリットとデメリットとは?

在宅勤務という働き方が注目されるようになり、働き方の選択肢が増えるようになりました。在宅勤務を取り入れると、地方には少ない優秀なスペシャリストを採用するチャンスが広がります。しかし、在宅勤務にはさまざまな問題点が含まれているため注意が必要です。ただ、問題点をあらかじめ把握しておくことで、新しい働き方を活用できるようになるでしょう。また、在宅勤務における裁量労働制には、雇用者と労働者それぞれに、メリットとデメリットがあるのです。その両方を知っておくと、上手に裁量労働制が導入できます。そこで、在宅勤務における裁量労働制について詳しく解説し、メリットやデメリットだけでなく気を付けておきたい点なども併せて紹介します。

裁量労働制とはいったい何か?企業が覚えておきたい仕組み

裁量労働制というのは、みなし労働時間制のひとつです。労働時間が労働者の裁量にゆだねられた労働契約のことであり、労働時間の長さに関係なく、契約した労働時間分を働いたとみなされます。例えば、裁量労制の契約における、みなし労働時間を1日7時間としましょう。その場合、実際の労働時間が3時間と短くても9時間と長くなっても、契約した7時間を働いたことになります。その結果、あらかじめ決められた7時間分が給与に反映されるのです。裁量労働制には企画業務型裁量労働制と専門業務型裁量労働制の2つがあり、それぞれ対象となる職種が異なります。裁量労働制の特徴として、出社時間と退社時間が決まっていないことも挙げられるでしょう。働く時間に制限がないため、何時に仕事を開始し、何時に終業するのかは労働者の自由です。ただし、多くの場合において実働時間の残業代は発生しません。

裁量労働制は、労働者の裁量によって労働時間が決められます。しかし、企画やクリエイティブな仕事が多く、成果を残すために長時間労働になってしまいがちな点が問題です。休日出勤になることも多く、あらかじめ取り決められた労働時間と実際の労働時間がかけ離れてしまうこともあるでしょう。裁量労働制であっても休日はきちんと設ける必要があり、休日に働いた分の賃金は別途算出して支払わなければいけません。裁量労働制というのは、評価の基準を時間ではなく成果においています。労働者の裁量によって労働時間を決め、効率的に働いてもらうことを目的としている雇用方法です。しかしながら、実際には不当な長時間労働も多いといえるでしょう。

企画業務型裁量労働制に該当する職種にはどんなものがあるか?

裁量労働制のひとつである企画業務型裁量労働制は、企業の中核を担う部門において、企画などを行う労働者にみなし時間制を認めることをいいます。企画業務型裁量労働制は、企業における一定範囲の事務的業務が対象です。ただし、対象となる業務は明確ではありません。しかしながら、企画業務型裁量労働制を取り入れる場合には労使委員会を設置し、5分の4以上の多数決を決議する必要があるといった厳格な要件が設けられています。

企画業務型裁量労働制に該当する業務には、経営企画をする部署において調査や分析を行い、経営計画を策定する業務があります。経営企画をする部署で調査や分析を行い、新しい社内組織を編成するのも企画業務型裁量労働制に該当する業務です。また、人事や労務を担当する部署で調査や分析を行う業務のなかにも企画業務型裁量労働制に該当する職種があります。例えば、新しい人事制度を策定する業務や社員教育や研修制度を策定する業務が該当します。財務や経理を担当する部署で調査や分析を行う職種では、財務などの計画を算定する業務についている人が企画業務型裁量労働制に該当するのです。

そのほかにも、広報担当部署で調査や分析を行い広報の企画や立案をする業務や、営業等の企画を担当する部署において調査や分析を行い、企業全体の営業方針などを策定する業務も含まれます。さらに、生産に関する企画をする部署でも、調査や分析を行い、生産計画を策定する業務であれば企画業務型裁量労働制に該当するといえるでしょう。

専門業務型裁量労働制に該当する職種にはどんなものがあるか?

2つある裁量労働制のうち、専門業務型裁量労働制は、業務の性質上労働者の裁量にゆだねる業務のみにおいて裁量労働制が導入できるものです。専門業務型裁量労働制に該当する職種は19種と、極めて限定的であるのも特徴でしょう。導入に際して厚生労働省令および厚生労働大臣告示で定められた具体的な業務の中から該当職種を検討する必要もあります。該当する職種が具体的に決められているのは、適切な対象者に制度を適用できるようにするためです。対象を限定していない場合には、何をもって専門業務として扱うのかといった対象が曖昧になってしまうことがあります。そういった理由から、具体的な職種を限定しています。

専門業務型裁量労働制として認められている職種の1つ目は、新商品や新技術の研究開発業務です。情報処理システムの分析や設計、出版や放送分野での取材や編集業務も該当職種に含まれます。衣類や広告などのデザイン業務や、放送や映像のプロデューサーやディレクター業務といったクリエイティブな職種も専門業務型裁量労働制に該当するのです。広告などのコピーライター業務やシステムコンサルタント業務、インテリアコーディネーター業務も該当します。

さらに、ゲーム用ソフトウェア開発業務も専門業務型裁量労働制の該当職種のひとつです。クリエイティブな職種だけでなく、証券アナリスト業務や金融商品開発業務、大学での教授研究業務も該当します。そのほかにも、非常に専門的な知識を必要とする公認会計士業務や弁護士業務、建築士業務、不動産鑑定業務も専門業務型裁量労働制に該当する職種です。それに加えて、弁理士業務や税理士業務、中小企業診断士の業務もあわせた19種が専門業務型裁量労働制に該当します。

裁量労働制を採用したときの雇用者と労働者のメリット

裁量労働制を採用した際には、雇用者と労働者それぞれにメリットがあります。まず雇用者は、人件費を予測しやすいのがメリットです。みなし労働時間の概念を用いる裁量労働制では、原則的に時間外労働における残業代は発生しません。残業代の支払いがないことで、人件費の総額があらかじめ算出でき、人件費の予測値が早い段階でわかるようになります。また、労務管理がしやすいのもメリットのひとつです。労働者1人当たりの残業代を計算するのは手間のかかる作業ですが、みなし労働時間を固定給として処理できることで労務管理負担が軽減できます。
労働者が得られるメリットには始業や終業時間を自分で決められることがあるでしょう。仕事の処理能力が高められた場合には、拘束時間の短縮が可能です。勤務時間が短くなっても給与が減額してしまうことにはなりません。あらかじめ決められたみなし労働時間分は労働したとみなされますので、事前の取り決め通りの給料が支払われます。さらに、自分のペースで仕事ができるのも、労働者のメリットでしょう。裁量労働制の対象となるのは上司の指示を必要とせず、自ら進んで行う業務や専門的な業務です。原則として仕事のやり方は労働者の裁量次第なので、周囲に振り回されることなく仕事が進められます。

裁量労働制を採用したときの雇用者と労働者のデメリット

裁量労働制を採用した場合には、雇用者と労働者のそれぞれにデメリットもあります。まず、雇用者は裁量労働制を導入するにあたり、さまざまな手続きをしなければなりません。労働者を代表する委員、使用者を代表とする委員で構成する労使委員会を設置し、さらに委員会の運営ルールを定めることが必要となっています。これらの手続きを、面倒だと感じることもあるでしょう。また、届け出や求人募集、就業時間などに対して適切な対応をしないことには、労働基準監督署からの指導や罰則を受けることもあります。

労働者にとってのデメリットは、労働時間が過剰になってしまうケースがあることでしょう。拘束時間が短縮になればメリットとなります。しかし、業務が立て込んだ場合には労働時間が長くなってしまうことがめずらしくありません。実際、労働政策研究・研修機構が行った2013年の調査では、裁量労働制の月当たりの労働時間が一般労働者を上回っていたのです。また、裁量労働制では、休日手当や深夜手当以外の時間外労働には残業代が支給されないのが原則です。そのため、長時間働いてもそれに見合った収入が得られないと感じることもあります。そのほかにも、人件費の予測ができ、残業代を支給しなくていいことから、裁量のない労働者へ裁量労働制を導入する違法な雇用者もみられますので注意が必要です。

裁量労働制はフレックス制とはどのような点が違うのか?

裁量労働制とフレックス制は、しばしば混同されがちです。しかしながら、この2つには決定的な違いがありますので知っておきましょう。まず、裁量労働制とフレックス制では、残業手当が異なります。裁量労働制では残業手当もあらかじめ見込みとして計算されるのが特徴です。労働時間によっては残業手当も支払う必要があるという判例もみられますが、多くの場合において残業手当は見込みとして計算されています。一方で、フレックス制は週40時間を超えた労働に対して残業手当が支払われる働き方です。フレックス制は時間管理もしっかりとしているといえるでしょう。さらに、業務の対象範囲にも違いがあります。裁量労働制では対象業務が明確に決まっているのに対し、フレックス制の業務の対象範囲は決められていません。

裁量労働制とみなし労働の関係は?在宅勤務雇用の際のポイント

裁量労働制によって在宅勤務で雇用する場合には、雇用主は仕事の開始時間と終了時間を制限できません。しかしながら、あらかじめみなし時間を決めておく必要があります。例を挙げると、1日8時間労働とみなした場合、労働時間が5時間であっても10時間であっても8時間として処理されるのです。ただし、裁量労働制でも36協定は適用されます。36協定というのは、法定労働時間である1日8時間、週40時間を超える場合に労働基準法第36条に基づく労使協定を締結することです。

締結された労使協定は、所轄労働基準監督署長への届出が必要です。また、厚生労働省によって、雇用主は36協定の範囲内であっても労働者に対する安全配慮義務を負い、さらに、労働時間が長くなるほど過労死との関係性が強まることにも留意しなくてはいけないとされています。しかし、在宅勤務の場合には過剰な残業を防ぐのが難しいといえるでしょう。そのため、労働者の実労働を把握しておくことが大切です。また、2018年6月の労働基準法の改正では、36協定で定める時間外労働に上限が設けられ、罰則も付きました。時間外労働の上限は月45時間、年360時間であり、特別な事情がない場合にはこれを超えることができません。

裁量労働制の在宅勤務求人を実施するときに企業側が注意すべき点

裁量労働制の在宅勤務求人を実施する際、企業側が注意すべき点がいくつかあります。まず、労働基準監督署への届けには注意が必要です。裁量労働制は適切な対象業務にのみ適用し、労使協定または労使委員会の決議が求められます。また、求人時には、在宅勤務であることを明示し、裁量労働制であることもはっきりと示しておくことが重要です。さらに、裁量労働制は対象となる業務しか募集できませんので注意しましょう。そのほかにも、労働時間の配分や業務の遂行方法の指示ができません。在宅勤務に関しても同様に対応するようにしましょう。そのうえ、36協定にも違反しないよう気を付ける必要があります。

裁量労働制の運用に不適正がみられた場合にはどうなる?

労働者を対象業務以外の業務に従事させた場合や、労働時間の違法または長時間労働をさせた場合には、裁量労働制の運用に不適正があったと判断されます。このようなケースでは、都道府県労働局による指導を受けますので注意しましょう。これは、企業の経営トップに対して行われるもので、労働試作基本方針をふまえ監督指導に対する企業の納得性を高めることを目的としています。さらに、労働基準法等関係法令を守るよう、企業の主体的な取り組みも促されるのです。それだけでなく、企業名も公表されてしまいます。悪質な裁量労働制を採用した企業のなかには、書類送検されるケースもありますので、裁量労働制は適切に運用することが大切です。

まとめ

裁量労働制を導入する際には、事前にみなし労働時間などの取り決めをしなくてはいけません。労使委員会の設置や、運営ルールを定めるなど、さまざまな準備が必要です。裁量労働制は労働者にとって労働時間に縛られないといったメリットがあります。しかし、雇用者は在宅勤務であっても36協定をはじめとした労働基準法が適用されますので、導入の際には覚えておくのがいいでしょう。しかしながら、しっかりと準備をし、法律を守れば、雇用者にも労働者にもメリットが期待できるのです。裁量労働制の在宅勤務は、地方でも求人エントリーを増やすチャンスでもあります。上手に活用し、企業の利益につなげましょう。

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