在宅勤務制度を導入したらいいか迷ったときのチェックポイント
経営者や人事担当者で、人材不足に悩んでいることから、在宅勤務を新たに取り入れようか悩んでいる人はいませんか。在宅勤務は新しい働き方の一つになっていて、積極的に企業へ取り入れることで、企業側と働く側の両方にメリットを生み出すことができます。しかしながら、どのような企業にも向いているわけではないので、その点は理解しておきましょう。在宅勤務制度は導入するにあたって、適した環境でなければ逆効果になってしまう可能性があります。導入に失敗しないためにも、在宅勤務制度のメリットとデメリットをしっかり押さえておくことが大切です。在宅勤務制度のメリットとデメリットの両方を理解し、導入が向いているかどうかチェックしてみましょう。
在宅勤務とは何を指すのか?テレワークとはどのように違う?
在宅勤務とは、従業員がそれぞれの自宅で業務を遂行することです。通常の会社勤務と異なる部分は、従業員がわざわざ会社に通勤しなくても日々の業務をこなすことができるので、時間の短縮に繋げることができます。それだけでなく、交通費や従業員一人あたりの経費削減などにも繋がることから、注目を浴びている働き方のひとつです。似たような働き方には、在宅ワークというものがありますが、在宅ワークは非雇用型なのに対して、在宅勤務は企業が雇用してるという部分に違いがあります。
在宅勤務の場合は企業に雇用される形になるので、必要になる連絡事項等があるときは企業とコミュニケーションを取りながら仕事を進めていきます。連絡の手段には、チャットワークやEメール、電話などのツールを用いて行うのが一般的です。在宅勤務には基本的に自宅で勤務する時間が多い常時型在宅勤務と、週1~2回など、部分的に在宅勤務になる随時型在宅勤務の2種類があり、それぞれの企業や従業員の都合に合わせて勤務体制を変えることが可能となっています。
・テレワークとの違いは?
在宅勤務はテレワークという働き方の一形態として位置づけられているものです。政府では平成23年から、2015年までに在宅型テレワーカーを490万人から700万人にするという目標を立てて活動してきました。他にはモバイルワークやサテライトオフィスもテレワークの形態のひとつとなっています。
・モバイルワークとは?
決められたオフィスや所定場所で勤務するのではなく、時間や場所に縛られずに通信機器を活用して柔軟に働くことのできるテレワークのひとつです。
・サテライトオフィスとは?
本社以外のオフィススペースでパソコンなどを利用した働き方を指します。一般的に都市部の企業は郊外にサテライトオフィスを構え、地方の企業は都心部にサテライトオフィスを構えることが多くなっています。
在宅勤務を導入するとどのようなメリットが期待できるか?
在宅勤務を導入することで期待できるメリットについて、常時型在宅勤務の場合と随時型在宅勤務の場合を以下にまとめました。
・常時型在宅勤務の場合
通勤が難しい遠隔に住んでいる人材の求人募集ができるようになり、埋もれていたスペシャリストや優秀な人材の採用を可能にします。また、在宅勤務では従業員が配偶者の人事異動や家庭の事情などで遠方に居住することになっても、離職をせずに仕事を継続させることが可能になります。その他には、海外に住んでいる日本人や現地の外国人を雇用することもできるのです。
・随時型在宅勤務の場合
親の介護や育児中の従業員が急な事情などで通勤できないといった日があった場合でも、在宅勤務であれば業務に支障を出さずに済むケースがあるので、効果的に活用することができます。万が一、災害やパンデミックといった緊急事態で通勤できない日があったとしても、業務の遂行ができるので、安定した事業の継続にも繋げられます。
在宅勤務導入のチェック項目1:在宅勤務が可能な仕事かどうか
在宅勤務を導入する際のチェックポイントは、在宅勤務が可能な仕事であるかどうかを見極めることが大切です。導入するには適した条件がありますので、以下を参考にしてみて下さい。
在宅勤務に向いている代表的な職種
一般的に在宅勤務が向いていると言われている代表的な職種は以下のようなものがあります。
・ライターや編集者
・システムエンジニア
・プログラマー
・グラフィックデザイナー
・webデザイナー
・営業など
エンジニアやプログラマーなど、IT業界で働く従業員が在宅勤務を活用しています。アプリケーションやシステムを開発をする仕事の中でもシステムエンジニアは、仕事の方針を決定する打合せや交渉などの業務を担当しています。一見、在宅勤務には向いていない印象がありますが、必要なときだけミーティングに出向き、普段はチャットツールやEメール、電話などのツールを使用してコミュニケーション行うことで、プロジェクトを進めていくことを可能にしています。
IT関係の職種だけでなく、実は営業職も在宅勤務に向いている職種です。これは、在宅勤務のみで営業の仕事をこなすという意味ではなく、顧客のもとへ足を運ぶ際に、わざわざ職場に出向く手間を省いた勤務形態を意味します。ですから、従業員は自宅から直接顧客のもとへ営業に出向き、業務を終えれば直帰することが可能になるのです。必要な事務作業などは、空き時間や移動中に行うことになっています。しかし、この勤務形態を可能にするためには、アプリなどを使用して他のメンバーとの連携や、空き時間や移動中に事務作業を行うことのできるシステム作りが必要となってきます。
在宅勤務可能な主な業務
在宅勤務が可能な業務は主に以下のようなものがあります。
・データ入力
・資料作成
・見積作成
・プログラミング
・デザイン、設計
・マーケティングなど
在宅勤務が可能になるのは、一人での作業がメインになる業務です。専門的な作業を行うデスクワークやソフトウェア開発の技術職、デザイン、設計などのクリエイティブな業種が主になっています。業務に対して必要になる連絡事項等は、チャットツールやEメール、電話などのツールを使うことでやりとりし、業務に支障をきたさないことが条件と言えます。また、集中力が必要とされることが多く、自分のペースを崩さずに行える業務は在宅勤務を取り入れやすいです。
在宅勤務導入のチェック項目2:導入した場合メリットはあるか?
宅勤勤務を導入するといっても、企業にとって成果が上がらなければ意味がありません。宅勤勤務を導入することには、さまざまなのメリットがあります。企業の状況を考慮して上手く利用することで、企業にとっても従業員にとっても大きなメリットを生み出すことが可能になるのです。たとえば、従業員は自宅で作業をすることになるので、職場の人間とのムダ話や必要ではない会話をすることなく、集中して仕事に取り掛かることができるメリットがあります。また、必要以上に人間関係に悩まなくて済むため、対人関係の苦手な人や障害を持っている人でも質の高い仕事をこなすことができるのです。その他にも、通勤時間にかかっていた時間をプライベートの時間にあてることで、充実した生活を送ることが可能になります。
宅勤勤務の導入は、企業の経費削減にも高い効果を発揮します。従業員は仕事をするのにわざわざ職場に通勤しなくて済むので、交通費を支給している場合は削減に繋がります。また、従業員が会社で仕事をするとなれば、机や椅子、備品類、光熱費や水道代など、さまざまな経費がかかりますが、宅勤勤務の導入でこれらの経費を全て削減することが可能です。従業員が通勤時間などの理由でストレスや不満を抱えている場合に宅勤勤務を導入すれば、従業員と企業の両方にメリットをもたらすことができます。遠隔での仕事が可能になるので、経験豊富な人材や地方には少ないスペシャリストの採用にも期待が持てます。
企業が人材を募集する際のイメージアップや、自社のアピールポイントにも繋げることができるので、効果的に活用していきましょう。宅勤勤務はさまざまなメリットがあることから注目されていますが、実際に取り入れている企業は、まだごく一部です。先進的な企業のイメージアップに繋がり、従業員を大切に扱う取り組みなどから、求人エントリーや売上の増加を狙うこともできるのです。また、新しい制度を導入することで、働き方や成果に対する可視化を行うことができ、さらには、業務内容の見直しや再構築により会社を生まれ変わらせる機会にも繋げることができます。
宅勤勤務にはさまざまなメリットがあることが分かりました。実際に在宅勤務の導入を考えているのであれば、該当する従業員がいるかどうかを確認しておきましょう。たとえば、通勤時間が長い従業員が在籍していて、通勤にストレスや不満を抱えているようであれば、ストレスの解消に繋げることができます。通勤によるストレスや不満がなくなることで、質の高い業務を期待することができます。なお、新規で従業員を採用する場合は、在宅勤務で業務の拡張が図れるなどのメリットがあることも考えられるのです。
在宅勤務導入のチェック項目3:コミュニケーションは大丈夫か?
在宅勤務を導入する際にチェックしておきたいポイントは、正しい業務の伝達など、コミュニケーションによる問題をクリアできるかどうかです。世の中には、在宅勤務のコミュニケーションに使えるツールや、勤怠管理にも使える便利なツールがありますが、そうしたツールを導入して活用できる環境にあるかどうかの確認が大切です。
コミュニケーションツールの活用は、在宅勤務を行う従業員のみしか使用できない環境にある場合、仕事に支障をきたしてしまう可能性も考えられます。上司を始め、関係性のある従業員全員が使用可能であるのが理想の環境と言えます。また、在宅勤務といえど、仕事にはコミュニケーションが大切になるので、海外在住者を雇用したい場合は外国人でも言語に問題がないかどうかも必ずチェックしておきましょう。
在宅勤務導入のチェック項目4:他の従業員の理解を得られるか?
接客やデスクワークなど、さまざまな職種を取り入れている企業の場合、従業員全員を在宅勤務にすることは不可能です。接客業のように自社の看板を背負って顧客と接する職種の場合は、在宅勤務を取り入れることは極めて困難になります。在宅勤務が可能な従業員とそうでない従業員に分かれてしまうと、在宅勤務ができない従業員から特別感を持って見られてしまうことから、利用しにくい従業員も出てきます。職種や部署で分けて、部分的に導入するなど、利用しやすい工夫が必要なことも理解しておきましょう。このような場合の起こりうる問題を予測し、解決策を考えることがポイントになってきます。
在宅勤務を導入する場合の具体的なルール作りや情報収集をする
在宅勤務をいきなり導入するのではなく、関心が高まったらまずいろいろ情報収集することが重要です。そのためには、在宅ワークやテレワーク、リモートワークに役立つ情報をいろいろ見てみることや、在宅勤務について相談できそうな機関の資料を取り寄せてみることなども有効です。
他の企業では、実際にどのような導入事例があるのかを参考にしておくのもおすすめです。在宅勤務の導入は年々注目されてきているので、国内でも導入事例がたくさんあります。他の導入事例を参考にすることで視野が広がり、導入にあたっての戦略を立てやすくなる効果があります。在宅ワークやテレワーク、リモートワークなど、さまざまな役立つ情報を得ておきましょう。
さまざまな情報を得ておくことで、在宅勤務を導入する際に必要なさまざまなルールを把握することができるようになり、自社の事業や業務形態に合った在宅勤務のルールづくりを進めることができるようになるでしょう。
まとめ
在宅勤務は従業員がそれぞれの自宅で業務を遂行することができ、子育て中や長時間通勤によるストレスを抱えている人にとって働きやすい環境を生み出すことができます。在宅ワークとは違い、企業に雇われながら在宅勤務をする形態になることから、収入面の安定性もあり組織の1人として働くことが可能です。企業も在宅勤務を取り入れることによって、従業員にかかる経費の削減などのメリットがあり、導入する企業が今後増えていくでしょう。
導入をしようか迷っている経営者や人事担当者は、まず、自社が在宅勤務が可能かどうか、得られるメリットはあるのか調査を行いましょう。そして、導入が可能と判断された場合には、自社に該当する従業員がいるかどうかの確認をします。導入は直ぐに実施するのではなく、従業員の理解への配慮や必要なルール等をしっかりと構築し、十分な準備をしてから行いましょう。また、どのような導入事例があるかにも注目する必要があり、幅広い視点での戦略が大切です。
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