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働き方改革で導入が加速!在宅勤務制度について詳しく知りたい!

近年、働き方改革の中で在宅勤務をはじめとするリモートワークが推進されています。インターネットが普及したことや、さまざまなコミュニケーションツールが開発されてきたことで、必ずしも会社にいなくても業務が遂行できる環境が整ってきました。在宅勤務は単に企業が人材確保や経費節減のために制度を取り入れるというだけではなく、政府が主導して働き方改革を進めるために、在宅勤務制度に関する具体的な目標を掲げています。そこでこの記事では、在宅勤務制度の概要やメリット、導入するにあたって考えておかなければならない課題などについて詳しく説明します。さらに、実際に在宅勤務を導入している企業の事例についてもいくつか解説します。

政府が働き方改革で在宅勤務制度を推進する3つの理由とは

高度成長期にはがむしゃらに働き、プライベートの生活を犠牲にしてきた人も多かったことでしょう。その世代の人たちのおかげで、日本は戦後奇跡的な経済成長を遂げられたという側面があるかもしれません。そんな時代には、仕事とプライベートを両立させるのは難しいことでした。しかし、本来は生活していくのに十分な収入を得ながら、仕事にやりがいを感じ、プライベートの生活も充実させたいものです。そこで、政府は働き方改革を進め、仕事と生活の調和という意味を持つワークライフバランスを向上させる取り組みを始めました。

また、大企業はとかく東京をはじめとした大都市に集中しがちです。自然と働く人々も集まるため、都心には人口が集中します。在宅勤務で働くことができるなら、地方に住みながらでも、さまざまな仕事をすることが可能になるのです。つまり、在宅勤務制度を推進することで、都心の人口集中を緩和し、同時に地方活性化にもつなげられるというのも理由として挙げられます。

さらに、現代の日本では少子高齢化が進んで生産年齢人口そのものが減っている傾向にあります。それに加えて、子育て世代は育児との両立ができる労働環境が整っていないことも多く、特に女性の場合は妊娠・出産を機にそのまま仕事が続けられず退職する人が少なからずいるのも現実でしょう。育児休暇を取得できても、待機児童問題などで仕事に復帰したいときに子どもを保育園に預けられないという問題に直面することもあります。

また、親の介護が必要になる世代でも、仕事と介護の両立が難しいことで仕事が続けられないという状況に陥ることもあるのです。こうした働き続けることが難しい環境が続けば、企業側としてもいずれ人手不足に悩まされる懸念があります。そのため、働き方改革では働き手のライフステージを考慮した柔軟な対応をとることも目標の一つとなっています。人生のさまざまな状況を経ても働き続けられる体制を整えることは、結局働き手にとっても企業にとってもプラスになるでしょう。

在宅勤務制度は政府のさまざまな施策で推進されている

高度成長期などのように、長時間労働が当たり前という時代もありました。しかし、過労死の問題をはじめ、長時間労働が引き起こす弊害も日本は数々経験してきたのです。働き方改革では、「長時間労働の是正」という点がポイントのひとつとして考えられ、在宅勤務が長時間労働の是正を実現する鍵として注目されています。情報通信技術(いわゆるICT)が発展したことで、パソコンやスマートフォン、タブレットなどを駆使すれば、会社にいなくても仕事ができるようになったのです。そのため、実際に働き方改革の実現を目指すようになってから、在宅勤務をはじめとするテレワークが政府によって推進されるようになりました。

テレワークを促進する施策の中には、たとえばアベノミクスのなかで提唱された「ニッポン一億総活躍プラン」があります。子育てや介護をする人に対する支援などを含め、誰もがどんな状況でも活躍できる社会を実現するということを目指した施策です。また、ほかにも「世界最先端IT国家創造宣言」や「経済財政運営と改革の基本方針2017」「未来投資戦略2017」「働き方改革実行計画」などがあります。

2020年までに在宅勤務者が全体の1割以上を占める?

国土交通省が発表した「平成27年度テレワーク人口実態調査」によれば、在宅で週1日以上、終日就業している雇用型テレワーカーは全労働者数のうち2.7%です。そして、週何日かでもすでに終日在宅勤務で働いている人に注目してみると、在宅勤務をさらに増やしたいという意見が多くあります。労働者側にとっては、在宅勤務をすることで通勤に時間を割く必要がなくなるため、その分をほかのことをするのに使うことが可能です。また、通勤にかかる体力的な負担も減らすことができます。育児や介護をしている人にとっては仕事とのバランスが取りやすくなるほか、プライベートの充実にもつなげることができるでしょう。

2014に改訂された「世界最先端IT国家創造宣言」では、雇用形態の多様化やワークライフバランスについて2020年までの目標が定められています。たとえば、テレワークを導入する企業の目標値は、2012年比で3倍です。また、週に1日以上在宅勤務をするテレワーカーを全労働者数の10%以上にすることも掲げられています。さらに、世界最先端IT国家創造宣言では、単にテレワーカーの数を増やす取り組みについて言及しているだけではありません。

女性のさまざまなライフステージに関する目標値も定められていて、第一子出産前後の女性の就業率を55%まで高めるというのもそのひとつです。また、25~44歳までの働き盛りの女性の就業率を、73%にまで高めるという目標値もあります。つまり、在宅勤務を始めとするテレワークに関しては、ただこうあれば、という希望を唱えただけのことではなく、すでに国単位の施策として計画化されているのです。そして、今後数年でさらに加速化していくことも予想されています。

在宅勤務とは具体的にどんな働き方のことを指す?

在宅勤務といっても働き方はひとつではありません。テレワークすなわち在宅勤務と思われがちですが、企業が導入するテレワークはもっと多岐にわたっています。テレワークとは、もともと「情報通信技術を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方」の総称であり、必ずテレワークと在宅勤務がイコールではないのです。

もちろん、雇用型テレワーカーとしての勤務形態のなかには、パソコンを使って自宅で仕事をするというスタイルも含まれます。しかし、スマートフォンやタブレットをはじめとしたモバイル機器を使って会社以外の場所で業務を行うこともテレワークなのです。つまり、普段は会社に通勤して仕事をしている人が、移動中や出張先などでモバイル機器を駆使して仕事をする場合もテレワークであり、必ずしも在宅勤務であるわけではありません。また、会社以外に設けられたサテライトオフィスのような場所も含め、複数施設を使った勤務をすることもテレワークに含まれます。以上のように、大きく分けてテレワークには3種類の勤務形態があり、在宅勤務は企業が行うテレワークのひとつだということです。

一方、雇用型のテレワーク以外に、自営型の在宅ワークもテレワークに含まれます。たとえば、企業に所属するのではなく、専門性の高い業務をフリーランスとして行っている人や、内職している人などです。なかには、本業が別にあり、在宅ワークは副業という場合もあります。

在宅勤務に向いている業務内容とはどんなもの

企業として在宅勤務を導入したいと考えていても、職種によっては不向きな場合もあるため注意が必要です。在宅勤務がしやすい業務としては、3つの特徴があります。1つは始めから終わりまで、1人で遂行できる業務であることです。業務を進めていくなかで複数人でコミュニケーションを取ることが大切になる仕事や協力しなくてはならない仕事の場合は、在宅勤務は難しいことが多いでしょう。2つ目は業務の成果が客観的に判断できるかどうかです。

3つ目としては、本人の裁量に任せる要素が大きい業務であることが挙げられます。細かく上司やクライアントなどに確認が必要だったり、指示を仰がなければいけなかったりする仕事では、近くに相手がいないとタイムラグが発生してなかなか業務が進まないこともあるでしょう。一方、ある程度本人の裁量に任せられていれば、スムーズに仕事をすることができるため在宅勤務に向いています。

以上のポイントをふまえ、どんな業務が在宅勤務に向いているかというと、1人で集中して作業にあたる研究や開発業務などが具体例のひとつです。また、企画を考えたり、経理などの管理業務を行ったりなど、1人で黙々と作業する仕事も在宅勤務に向いているといえるでしょう。ウェブ関連の業務やライティング、デザインなどの仕事も在宅勤務に向いている3つの特徴を兼ね備えています。しかも、必ずしも会社に出勤しなくてもインターネットとパソコンなどの環境があればできる仕事です。

通信技術の発達やコミュニケーションツールの多様化によって、ウェブ会議システムやビジネスチャットもさまざまなタイプがあります。企業の業務に適切なシステムを導入することによって、今後も在宅で勤務できる業種は増えていくと予想されるでしょう。

在宅勤務制度の導入が企業にもたらすメリット

在宅勤務制度は労働者側だけではなく、導入する企業側にもメリットが期待できます。実際に、まだまだ育児や介護などで仕事を離れる女性がいることは確かです。ほかにも、能力を持ちながら、なんらかの事情で本来やりたい仕事をできていない人もいるかもしれません。もし、在宅勤務が可能ならば、この仕事をやりたいという人もいるはずなのです。労働力不足が深刻化してきているなか、在宅勤務制度を導入することで企業としては、眠っている優秀な人材を獲得できるチャンスが増えます。

また、大規模な震災が発生したときなどには、リスクの分散になるというのもメリットのひとつです。会社に仕事の場が集中している状況に比べると、緊急時でも事業継続の可能性が高まります。さらに、在宅勤務制度を導入する際は、Web上のシステムで情報共有できるように環境を整えるなど、日常の業務スタイルも変化するでしょう。ペーパーレス化も進み、結果として業務革新も進めることができます。拠点となるオフィスの光熱費にかかる費用や通勤にかかる交通費などの圧縮も可能となり、コスト削減にもつながります。

企業として在宅勤務制度にあたって検討すべき課題

企業が在宅勤務制度を導入するためには、いくつか課題があります。まずは、スムーズに在宅勤務ができる職場環境を整備しておかなければなりません。たとえば、オフィスに勤務している場合に比べると、在宅勤務者はどうしてもコミュニケーション不足になりがちです。そのため、ビジネスチャットなど、使いやすいコミュニケーションツールを導入して、連絡体制の整備をすることが必要になります。また、会社と自宅のように物理的に距離が離れれば、従来のように紙媒体の資料を使ってやり取りすることも難しいため、ペーパーレス化を推進してオンラインで仕事ができる環境を整えることも大切です。

さらに、在宅勤務者は会社から見えない場所にいるため、オフィスで仕事をしているスタッフに比べると労働時間の管理をするのが難しいこともあります。長時間労働になってしまわないように、在宅勤務者の労働管理を適正に行うのも課題のひとつです。また、在宅勤務者が実際に仕事をする場は企業の中のように管理が行き届いているわけではないため、セキュリティや情報漏洩の問題も考えておかなければならないでしょう。そして、在宅勤務者の人事評定や各種研修をどんな方法で実施するのか、経営層も含めた社員の意識改革をどのように行っていくかも、在宅勤務制度を実際に導入するときには考えておかなければいけない課題です。

在宅勤務制度の導入事例1.「カルビー」

在宅勤務制度を導入している企業のひとつとして、大手菓子メーカーのカルビーがあります。「多様性なくして成長はない」という経営方針を掲げていることに加え、働き方の意識改革を目指して2014年度から導入しました。当初は在宅勤務をする日数に上限がありましたが、2017年の4月からは上限を撤廃しています。そして、業務を行う場所を自宅以外も可能にするなど幅を広げ、よりフレキシブルな制度に進化しているのが特徴的です。

実際にテレワークの制度を利用した従業員のうち220名にアンケートを取ってみたところ、約7割は「業務効率が向上した」、約9割は「ライフワークバランスが向上した」と回答しています。カルビーの事例は、在宅勤務をはじめとしたテレワークを導入することによって実際に社員満足度がアップし、生産性も高めることができた成功例のひとつです。

在宅勤務制度の導入事例2.「日本航空」

大手航空会社として国内でも知られている日本航空もワークライフバランスに関するさまざまな取り組みを行っており、在宅勤務制度を導入しています。日本航空では、まず業務に必要な書類を電子化することで在宅勤務がしやすい環境を整えています。そして、月1回は在宅勤務を義務化しているほか、普通勤務部門を中心に週1回の在宅勤務制度を導入している点が特徴のひとつです。2016年からは在宅勤務以外のテレワークも可能になりました。

また、日本航空はテレワークを福利厚生として考えているのではなく、生産性を向上させる方法としてとらえており、利用目的を問わずに解禁しているのもユニークなところです。さらに、「働く場所は世界中のどこでもよい」という考えから、テレワークを活用して仕事に携わりながら、休暇も取ることができる「ワーケーション」が最大5日間取得できる仕組みも整えられています。

まとめ

在宅勤務とはじめとするテレワークの導入は政府が具体的な数値計画を定めており、実際に推進されています。従業員にとってメリットがあることはもちろん、企業の成長にとってもメリットが多い制度です。そのため、対応しなければ、結果的に企業間や業種間での競争力低下にもつながる可能性があります。そうはいっても、いきなり導入するのが難しいという企業もあることでしょう。ただ、働き方改革を進めようと考えているのならば、段階的にまたは試験的にでも在宅勤務制度を導入してみてはいかがでしょうか。

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