働き方改革で中小企業はどう変わる?リモートワークのメリット
2019年4月から、中小企業に先駆けて大企業を対象に働き方改革が順次施行されています。働き方改革とは、働く人たちがそれぞれの事情に応じた多様で柔軟な働き方を選択できる社会を目指すための施策です。中でも政府が重要課題に掲げているのが「長時間労働の是正」であり、残業を減らすためには企業側でさらなる業務の効率化を検討していかなくてはなりません。中小企業やベンチャー企業の経営者の中には、働き方改革による変化にどう対応していけばよいのか悩んでいるという人も多いのではないでしょうか。働き方改革を実現するために政府が推進しているのが「リモートワーク」という新しい働き方です。この記事では、人手不足に悩む中小企業やベンチャー企業でリモートワークを導入するメリットについて解説します。
働き方改革でなぜリモートワークが推進されているのか
政府が主導する働き方改革の中でリモートワークが推進されていますが、リモートワークに注目が集まったきっかけは2011年3月に起きた東日本大震災です。東日本大震災では、被害を受けた首都圏を中心に公共交通機関の運休や計画停電などが実施されました。この経験を踏まえ、どのような事態でも場所を問わず円滑に業務が継続できる手段としてリモートワークの活用を、多くの企業が検討するようになったのです。また、実際にテレワークを導入した結果、多くの企業でさまざまなメリットが確認できたことも推進の理由となっています。
厚生労働省による「平成26年度テレワークモデル実証事業」で行われた企業アンケート調査によると、テレワーク導入の効果に挙げられたのは次のような内容です。まず、優秀な人材の確保や維持、ペーパーレス化などによる業務革新、通勤費や施設維持費が不要になることによるコストカット、そして顧客や従業員との連携強化などです。結果として、企業のブランドイメージアップにつながったという意見も散見されます。
また、企業だけでなく従業員のほうでもメリットを感じていることも大事なポイントです。たとえば、家族との時間が増えてワークライフバランスがとりやすくなった、自宅で集中することで業務の生産性がアップしたなどの効果が報告されました。このように、テレワークの導入は企業と従業員の双方にとって、多角的なメリットが期待できるといえます。
リモートワークが可能な職種や環境を整えやすい条件とは?
リモートワークは、主に自宅やサテライトオフィスなどでパソコンとインターネットを使って業務を行います。企業でリモートワークを初めて導入する場合は、まずはリモートワークと相性のよい職種や業務内容から段階的に導入を進めていくとスムーズです。リモートワークが可能な職種や環境を整えやすい条件については次のとおりです。リモートワークに適した職種は、オフィスで行うデータ入力などのデスクワーク、ライティングや編集業務、プログラミング、DTPデザインなどです。マーケティング領域でも、データ分析や資料作成などはリモートワークでも行えます。さらに、ソーシャルメディアやリスティング広告の運用、SEO対策などのようなウェブマーケティング分野も向いています。
環境を整えやすい条件として重要なのは、誰かと連携する作業ではなく、最初から最後まで個人で進められる作業の割合が高い仕事であることです。単純作業あるいは専門性の高い作業という表現に置き換えることもできます。次に、打ち合わせに時間を取られない、または打ち合わせを頻繁に行う必要がないということもポイントです。リモートワークの場合は、オンラインのビジネスチャットやビデオ通話を使ったコミュニケーションを行いますが、あくまで補助的なものです。複数人のグループで日々調整、連携しながら行うプロジェクト業務などは、リモートワークでは意思疎通が難しく、かえって非効率になってしまう場合もあります。
最後に、成果がわかりやすい仕事であることも大切です。リモートワークの場合、同じオフィス空間で働いているわけではないため、リモートワーカーの仕事の様子は基本的に見えません。プロセスの評価なども行いにくいため、データ入力やライティング、プログラミングなどのように仕事をした結果である「成果物」が明快であるほうが管理側としては楽です。
リモートワークのメリット1:人材不足の解消ができる
リモートワークにもっとも期待されるメリットが、人材不足の解消です。日本では労働人口が年々減少傾向にあります。そのため、新卒採用の募集をかけても応募が集まらない、希望していた人数が獲得できないといったケースも増えており、特に中小企業の人材難は深刻化しています。会社の事業を維持するだけの従業員が確保できなければ会社は存続できません。経営者の中には働くというと社員に自社のオフィスに出社してもらうことを前提にしている人も多いかもしれませんが、テレワークであれば勤務可能という人は案外多くいるのです。
たとえば、育児や介護などの理由でオフィスに勤務するのが難しい人です。特に女性の場合は、高い就労意欲があっても、結婚や育児といったライフステージイベントをきっかけに辞めざるを得ないケースが少なくありません。しかし、それまでは大手企業でバリバリと働いていた人もいて、即戦力となる高いスキルや能力を持つ人もいます。家庭が忙しい場合、再就職を断念する直接の原因になりやすいのが通勤時間や休日が希望と合わないという理由です。しかし、働く時間や場所を問わないリモートワークであればこういった問題の解決策になります。
女性に限らず、リモートワークは障害があり通勤が難しい人や家庭の事情で通勤範囲内に企業が少ない地域に引っ越した人などにも選択の可能性を広げます。このように、テレワークの導入は通勤がネックで離職を選ばざるをえなかったり就職をあきらめたりしている優秀な人材の獲得につながるのです。特に地方に本社を構える企業の場合は、地方では数少ないITなどの専門領域のスペシャリストや経験豊富な管理職を採用できる可能性も高まります。さらに、テレワーク導入によって「従業員のワークライフバランスに配慮している企業」としてブランドイメージが上がれば、新卒採用においても有利になります。
リモートワークのメリット2:オフィスの分散化が図れる
リモートワークのメリットとして次に挙げられるのが、オフィスの分散化が図れることです。通勤型の勤務で従業員を増やす場合は、基本的に人数分のデスクと椅子が必要となります。そのうえで、全員が快適に仕事を行え、会議も行える広さのオフィスを用意しなくてはなりません。従業員が増えた場合には、オフィス面積を増やす、あるいは引っ越しを検討することになるでしょう。デスクや椅子などのオフィス家具の購入や設備の追加も含めると、相当な経費がかかるでしょう。リモートワークの場合は、従業員の自宅や複数人で兼用するサテライトオフィスなどが仕事場になるため、会社として必要な経費を抑えることができます。
リモートワークのメリット3:災害時の業務の継続が可能
災害時の業務継続が可能になることもリモートワークの大きなメリットです。日本は世界の中でも地震が多い国として知られており、また東日本大震災のような大きな震災が起きないとも限りません。大きな災害時には、オフィスの倒壊などによって本社の業務停止を余儀なくされる場合もあります。そのような事態でも、被害に遭わなかった自宅を勤務場所にしているリモートワーカーであれば業務の継続が可能です。業種にもよりますが、リモートワーカーだけで業務を継続できれば被害を軽減できますし、事業全体の早期再開にもつながります。また、災害時に公共交通機関が運休していても、通勤の必要がなければ業務を継続しやすく、また通勤時に従業員がケガをするなどのリスクも回避できます。
リモートワークのメリット4:従業員の退職を回避しやすい
リモートワークには、従業員の退職を回避しやすいというメリットもあります。退職をする理由は人それぞれですが、中には仕事が好きだったけれどやむを得ない理由で退職する場合もあります。たとえば、多いのが遠くに住んでいる親など家族の介護が必要になったときや、出産・育児、配偶者の転勤による引っ越しなどです。また、実家の両親が高齢になってきたために近くに引っ越さないといけなくなったという場合もあるでしょう。ほかにも、病気やケガなど身体上の事情で通勤できなくなったために退職を決意するケースもあります。いずれの場合も、本人の能力には何ら影響のない理由です。
たとえ、述べたような状況に陥ったとしても、リモートワークという新しい選択肢があれば、従来であれば辞めざるを得なかった社員の離職防止につながります。企業としては、有能な従業員を手放さずに済み、従業員としてもせっかくのキャリアを途切れさせなくて済むのです。まさに企業と従業員にとってwin-winの結果が期待できます。さらに、仮に一時的にリモートワークで在宅勤務をしていたとしても、育児が落ち着いたりした段階でふたたびオフィス勤務が可能になるという人もいることでしょう。将来的な意味でも、リモートワークという勤務を早期に導入しておくことは大変効果が高いといえます。
リモートワークのメリット5:経費の削減にもつながる
リモートワークは、さまざまな面での経費削減にもつながります。まず、もっとも効果が高いのは従業員の通勤費が削減できることです。遠方で新幹線通勤が想定されるなど交通費が高額な場合でも、リモートワークであれば手当は不要です。仮にその分を従業員の自宅で仕事にかかる光熱費や通信費など、リモートワークの経費に充てたとしても、そちらのほうがはるかに安く済むのではないでしょうか。
海外など遠方でマーケティングや営業を行いたいという場合もあるでしょう。本社から従業員を派遣すると宿泊費や交通費、派遣手当などがかかってしまいますが、リモートワークであれば国内外から優秀な人材を採用できます。現地で従業員を雇って対応してもらうことで、こうした宿泊費や交通費を大幅に抑えることが可能です。また、リモートワーカーとのコミュニケーションに使うビデオ会議ツールは、発表者のパソコンの画面共有や資料共有なども可能であり、国内外の支社社員との会議にも便利です。従来のテレビ会議システムでは困難だった細かなデータの確認なども直接画面上で行えますので、会議のたびに全員が一同に会さなくて済みます。
また、リモートワークの導入によって社内のペーパーレス化が進めばその分コストカットにつながります。さらに、電子化した資料をクラウドサービスで共有していけば業務分担や達成状況も明確になり、プロセスやノウハウの引継ぎもスムーズです。このように業務の可視化が進むことで作業効率が上がれば無駄な残業時間や休出を防げますので、結果として人件費やオフィスの光熱費カットも期待できます。
リモートワークのメリット6:従業員のプライベートが充実する
リモートワークは、従業員にもさまざまなメリットをもたらします。たとえば在宅勤務が可能になることで通勤時間が不要になれば、家族との時間を増やす、趣味にいそしむ、スキルアップに励むなど、自分のプライベートの時間を増やせます。従業員のワークライフバランスが充実することで、仕事へのモチベーションがアップする効果も期待されるのではないでしょうか。また、周囲の話声や電話、不意な来客などに影響されることなく自宅で集中して業務に取り組めることで、オフィスで勤務するよりも仕事の効率がアップする場合もあります。
さらに、在宅勤務の場合は、従業員自身で仕事とプライベートの切り替えを行っていかなければなりません。業務時間を自分で管理していくことで、社会人として重要な自律性や創造性が身に付くということも大きなメリットです。加えて、テレワークを始めたことで、かえって職場との絆が強まり、今まで以上に密に連携を取るようになったという効果を感じている人もいます。テレワークという選択肢によって仕事を辞めずに済み、プライベートと仕事の両立という自己実現が叶うことで仕事への満足度が上がるという良い流れも期待できます。モチベーションがアップすることで仕事のアウトプットが上がれば、企業の業績アップにもつながるのではないでしょうか。
まとめ
人材不足は中小企業を中心に深刻な問題となりつつあります。特にひとり当たりの従業員が担う役割が多いベンチャーや中小企業の場合は、優秀な人材をどれだけ確保できるかが、今後の成長を左右するといっても過言ではありません。これからの時代において、人材は企業にとって何より貴重な財産といえます。通勤や家庭の事情など本人の能力と関係ない事情で、会社の大切な資産を失ってしまうのは非常にもったいないことです。リモートワークはこうした問題を解決する有効な手段のひとつです。経営者としてリモートワークの導入を検討する場合には、まずは気軽に資料請求から始めてみましょう。