リモートワークに資格は必要か?リモートワーカーに求めるスキル
リモートワークは会社に出勤する必要がない分、リモートワーカー自身が時間や仕事の管理をしっかり行う必要があります。会社側からみると、リモートワーカーがどこで何をしているか把握しきれない、また、コミュニケーション不足によるすれ違いなど、課題に感じる部分も少なくないでしょう。そんなリモートワーカーが社内で活躍するためには、オンラインで仕事がしやすい業務内容であることはもちろん、労働者のスキルと信頼が十分にあることが大前提です。また、リモートワークと相性がよい職種を見極め、それらを積極的に取り入れる姿勢も大事だといえます。
本記事では、リモートワーカーが持っていると望ましい資格や、リモートワーカーに求めるスキルで重視したい点について解説します。
リモートワークであるとよい資格1:建築士(一級・二級)
建築法に基づき、建築物の設計や現場監督を行う建築士。設計にはCADを使った図面の作成が基本となるため、オンラインで仕事がしやすい職業です。また、設計図どおりに造られているかを確認したり、職人へ指示を出したりするため現場へ出向くこともあります。顧客との打ち合わせや報告なども頻繁に行うため、オフィス以外で仕事をする機会も多いことから、リモートワーク向けの仕事といえます。
建築士の資格には一級建築士、二級建築士、木造建築士の3つがあります。このうち、一級建築士もしくは二級建築士を所有していると、リモートワーカーとして活躍するのに理想的です。一級建築士は建築士の中でもっとも難易度の高い資格で、受験するためには四年制大学の建築科を卒業後、2年以上の実務経験 が必要です。また、建築系の短期大学を卒業した場合や、すでに二級建築士の資格を持っている場合であれば、4年の実務経験を積むことで受験が可能となります。一級建築士になると一般住宅はもちろん、ビルや大規模なスタジアムなどあらゆる建築物の設計ができるようになるため、仕事の幅も広がります。
しかし、一般的な住宅を設計するのであれば二級建築士を持っていれば十分活躍できるレベルでしょう。二級建築士は、四年制大学の建築科を卒業すれば実務経験なしに受験が可能です。高校で建築の指定科目を学修した場合においては卒業後3年の実務経験を積むこと、また、建築に関する学歴がまったくない場合でも、7年の実務経験があれば受験が可能となります。一級建築士よりも設計可能な範囲は狭くなりますが、戸建住宅を設計する目的であればリモートワークにおいても期待できる資格です。家を建てる人のライフプランも含めて設計にあたるスキルがあればなおよいでしょう。
また、業務内容に求められるのが木造建築物の設計に限る場合、木造建築士の資格も役に立ちます。業務内容は一級建築士や二級建築士とほぼ変わりませんが、設計可能なのが木造の建築物に限られるため、戸建住宅全般の設計が必要な場合はやはり二級建築士を取得していなければなりません。
リモートワークであるとよい資格2:翻訳や通訳(TOEIC)
ある言語を日本語や他の外国語に変換し、それを書いて伝える翻訳、また、ある言語からある言語へ変換したものを音声によって伝える通訳。この2つの職業はオンラインで仕事をしやすい業務であることに加え、現場に出向く機会も多いため、リモートワークに向いている職業です。実際にフリーランスや兼業といったスタイルで働く人も多く、参考にできる部分もあるでしょう。
この通訳や翻訳の仕事には特別な資格はなく、誰でも名乗れるのが現状です。しかし、いうまでもなくこれらの仕事には高度な語学力はもちろん、コミュニケーションスキルが必須です。語学力としてはTOEICが900点以上、英検が1級以上であると好ましいです。ただし、これらのスコアが高いからといって翻訳や通訳のスキルが身についているとは限りません。
翻訳や通訳に関連する資格としては、日本翻訳連盟が実施する「ほんやく検定」というものがあります。この資格は基礎レベルを判定する4・5級と、実用レベルを判定する1〜3級に分かれています。実用レベルでは政治経済分野や金融・証券分野など、専門分野を選んで受験が可能なため、より実務内容に沿った能力が判定できます。この資格の2級以上を取得していることが、翻訳家としての活躍に期待できるレベルの目安です。
リモートワークであるとよい資格3:Webデザイナー
Web業界の拡大に伴い、どの企業においても今後需要が高まるとされるWebデザイナー。コーポレートサイトやグラフィックデザインの作成、HTMLやCSSのコーディング作業など、Webデザインの際に必要な知識をまんべんなく持った職業のことを指します。成果が納品物ベースとなるので会社としても作業内容を把握しやすいうえ、名前通りWeb上で完結できる仕事であるため、リモートワークに向いているといえます。
Webデザイナーはスキルや実績、これまでの経験などが重視されやすい職業であるため、この仕事をするために必須な資格はありません。しかし、Webデザインを行うためにはセンスだけでなく、HTMLやCSSなどの基礎的な知識、またIllustratorやPhotoshopの使い方は最低限学んでおく必要があります。顧客のイメージに合ったものをつくるための打ち合わせなども欠かせないため、コミュニケーション能力も必須といえるでしょう。
また、Webデザイナーには国家資格国家資格である「ウェブデザイン技能検定」というものが存在します。これは特定非営利活動法人 インターネットスキル認定普及協会が実施している試験で、レベルは1〜3級の3段階あります。1級になると合格率が10〜20%程度とやや難易度の高い試験ですが、取得していればWebデザイナーとしての知識が豊富であると判断できるため、レベルの高い仕事でも任せやすくなります。
リモートワークであるとよい資格5:ファイナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナー(以下、FP)とは、顧客の相談に応じて、経済的な悩みや資金計画について全般的にアドバイスができる知識を持った職業のことを指します。個人や中小企業の顧客に対し、ライフプランやライフイベントに沿った資金設計を立てることが主な仕事です。講演を行ったり個人の家計の相談を行ったりと顧客対応が中心になるため、リモートワークとしても成り立つ職業です。また、FPとしての活動以外にも、金融、保険、不動産などのあらゆる知識を生かして執筆業務をするなどの活躍も期待できるため、社内でこの資格を取得している人がいれば重宝するでしょう。
FPを名乗るためには、国家資格か民間資格のいずれか、もしくは両方を取得することが必要です。そのうち国家資格は「ファイナンシャル・プラニング技能士」(以下、FP技能士)というもので、1〜3級の等級があります。FPとしての実務に生かすには2級レベルの知識があると安心です。2級であれば、認定された講座を受講すれば誰でも受験資格が得られるため、一からFPの勉強をする場合には最適といえます。更新の必要がなく、一度取得すれば生涯有効であることがこの国家資格の特徴です。
また、民間資格には日本FP協会が認定する「アフィリエイテッド・ファイナンシャル・プランナー」(以下、AFP)、「サーティファイド・ファイナンシャル・プランナー」(以下、CFP)の2つがあり、それぞれ試験に合格することで取得が可能です。レベルとしてはAFPがFP技能士2級程度、CFPがFP技能士1級程度となります。これらは2年ごとの更新の際に継続教育が義務づけられているため、常に知識やスキルを学んでいきたいという向上心のある人に向いています。AFPの資格は、2級FP技能士に合格している人であれば認定された研修を修了するだけで取得が可能です。リモートワーカーには積極的に最新知識を学ぶことも求められるため、AFPも取得しているほうが好ましいでしょう。
リモートワークであるとよい資格6:Webライター・編集者
企業によるコンテンツマーケティングや個人のアフィリエイトサイトの増加により、一層Web上のコンテンツが求められるようになった昨今、Webライターや編集者の仕事も重宝されています。Web上の文章は専門書や論文などと違い、求められているのは読者にとって読みやすく、わかりやすい文章です。そのため、日本語能力や執筆分野の知識だけでなく、いかにわかりやすく自分の言葉で伝えられるかが重視されます。Webデザイナーと同様、オンラインで仕事が完結できることに加え、納品物によって成果がはっきりと見えるため、リモートワークとしても成り立つ職業です。
このようなWebライターや編集者にはこれといって必須の資格はなく、国家資格も存在しません。ただ、誰でも名乗れる仕事だからこそ客観的に能力を図れる民間の資格は、リモートワーカーの能力を判断するひとつの材料となるでしょう。民間のWebライターの資格はいくつかあり、日本クラウドソーシング協会が認定する「WEBライティング技能検定」もそのひとつです。社会人としてのマナーから執筆に関する正しい知識までが試験範囲となるため、基本的なコミュニケーション能力などの参考にもなる資格です。
リモートワーカーに求められるスキル1:自己管理能力
会社の上司や同僚と顔をあわせることがないリモートワーカーは、自分1人で日々のスケジュールや段取りを組まなければいけません。始業時間や就業時間、休憩時間の調整にいたるまで会社出勤のような決まりがないため、いかに自己管理できるかという能力が問われます。自己管理ができていないと仕事に遅れが出てしまったり、段取りを間違えやすくなったりと、仕事の品質の低下につながりかねません。反対に、仕事とプライベートの境目がはっきりしない分オーバーワークになりがちという面もあります。どちらにしても、やるべきことを時間内に集中して終わらせる能力や、ときには同僚に助けを求めるなどのコミュニケーション能力が求められます。
こうした問題の解決として会社ができることは、チャットツールなどを使って常に双方でコミュニケーションが取れる状態を作ることでしょう。ある程度の雑談を設けることによってチームとのつながりを感じられたり、新しいアイデアが生まれたりして、1人で作業をしていても仕事にメリハリをつけることができます。また、チーム内でメンバーそれぞれの今後のスケジュールを把握しておくことも重要です。リモートワークでも会社にいるときと同じようなパフォーマンスを上げるコツは、常にコミュニケーションをとりながら、お互いが持つスキルを補填しあえる環境をつくることであるといえます。
リモートワーカーに求められるスキル2:高い柔軟性
リモートワークの場合、顧客対応や取材などで初めての場所に行ったり、初めての人と会ったりと、新しい環境で仕事をしなくてはならない場面が多々あります。どのような環境においても臨機応変に対応し、柔軟に行動できることもリモートワーカーとして求められるスキルのひとつです。例えば、複数のリモートワーカーとオンラインミーティングを行う際は、それに合わせて自分の仕事時間を調整することも必要です。また、相手に合わせたコミュニケーションツールを使用するなど、さまざまなプラットフォームに精通していると、会社としてもより心強い存在になってくれるでしょう。
リモートワーカーに求められるスキル3:行動力と積極性
ただ単に与えられた仕事をこなすだけではリモートワーカーとしては未熟です。常に「誰のために」「何のために」なのかを自分の頭で考えながら業務にあたれる人でなければなりません。これまでのやり方に疑問をもったり、新しい方法を提案したりと、思ったことを積極的に行動に移す能力が求められます。リモートワーカーは、どんなにコミュニケーション手段が充実していたとしても、オフィスで働く仲間と物理的に離れていることでどうしても孤独になりがちです。意思疎通がしにくかったり、情報の共有が十分でなかったりすることもあるでしょう。そんな時に、自ら疑問点を解消したり、新たな情報を入手したりすることも重要です。時にはオフィスに顔を出してメンバーと雑談するなど、困った時にも協力してもらえる環境を自ら作り出していくこともリモートワーカーに必要なスキルといえます。
まとめ
リモートワークに適した職業は必ずしも資格が必要なものばかりではありませんが、実務において活用できる資格はいろいろあります。ただし、資格だけでなく、まずは本人のやる気や社員としての信頼度、積極性など、リモートワーカーとしての総合的なスキルを見極めることが大事です。そのうえで、経験や実務に役立つスキル、資格などを加味するとよいでしょう。また、会社としてもリモートワーカーが孤独にならないような対策も必要です。これらを考慮し、リモートワーカーを導入する企業として柔軟な働き方を提供できれば、雇用の幅も広がり優秀な人材の確保にもつながるでしょう。