事務職をはじめリモートワークで働ける仕事の種類とは?
中小企業庁による2018年版「中小企業白書」によると、日本の生産年齢人口は1995年をピークに減少傾向にあり、今後も継続して減り続けることが予測されています。働き盛りとなる人たちの人口が減少すれば、企業にとっては人手不足が大きな課題となります。特に、若者離れなどにより顕著に人口が減っている地方では、十分な人材を確保できないのが現状です。そのようななか、地方で人材不足を解消する方法としてリモートワークが注目されています。ただし、リモートワークを採用することはどんな職種であっても可能というわけではありません。そこで、リモートワークで働ける仕事にはどのようなものがあるのか、どのような企業で取り入れられるのかについて、リモートワークに必要となる具体的な環境や条件と併せて詳しく解説します。
まずリモートのワークの特徴とメリットを知っておこう
リモートワークの導入を検討し働き方を理解するためには、基本の知識として、リモートワークがどのようなものであるのかについて知っておくことが必須となります。そもそも、リモートワークとは、「遠隔」を意味する「remote」と「働く」という意味の「work」が組み合わさってできているとおり、従業員が遠隔で働くことを示す言葉です。会社を拠点とする従来の働き方とは異なり、自宅など会社以外の場所で働くことを主とした働き方をいいます。会社以外の場所を仕事の拠点とするため、業務伝達など企業とコミュニケーションを取る場合には、主に電話やメール、チャットツールなどを利用することが通常です。
アメリカでリモートワークのシステム構築を専門に行っているIT企業・NC Broadband社によると、リモートワークの働き方は働く形態によって大きく4つのタイプに分けられます。まず、100%の仕事を遠隔勤務で行う働き方が「フルタイム・リモートワーク」です。企業で正規に雇用している正規雇用者を対象としています。次に、フルタイム・リモートワークと同じく100%の仕事を遠隔勤務で行いますが、正規雇用者ではない人に遠隔で働いてもらう働き方が「リモート・アウトソース」です。対象となるのは外部の人材で、必要な業務に対してのみ委託契約を結びます。リモート・アウトソースを採用すると、期間などについて限定的に、専門性の高い優秀な人材を確保することが可能です。
加えて、すべての業務ではなく部分的に遠隔勤務を行うタイプを「ハイブリッド・リモートワーク」といいます。正規雇用者を対象とした働き方で、週のうち数日は会社で働きますが、残りの何日かは遠隔勤務をする方法です。リモートワークの導入を検討していても、すぐにフルで遠隔勤務のスタイルに変えることは企業にとって不安な場合もあるでしょう。そのような場合、部分的にリモートワークを採用する方法は様子を見ながらの対応ができるため安心して取り入れやすくなっています。さらに、一時的に遠隔業務を行うタイプが「テンポラリー・リモートワーク」です。たとえば、オンラインミティーングなどのような短い時間で部分的に遠隔勤務を行うスタイルが、これにあたります。
リモートワークで働くために必要な環境と条件は何か?
リモートワークを導入するためには、雇用側と雇用される側が共通して一定の環境と条件を整えていることが必要です。まず、インターネットが利用できる環境が共にあることは必須となります。また、業務の大切な情報を共有するにあたり、情報漏洩を防ぐためのセキュリティ対策が完備されていることも重要です。さらに、仕事をスムーズに進めるためにも、コミュニケーションの主要手段となるメール(SNS)やチャットツールなどを使うスキルを持ち合わせていることも条件となります。仕事の連絡や相談は電話で行うことも可能です。しかし、電話よりも、メールやチャットツールを使うほうが時間のロスをなくしたり、そのときどきの状況に合わせた対応ができる柔軟性を優先したりできるため、効率的な方法といえます。
さらに、リモートワークに対応したネットワークの環境を整えることもポイントです。利用する企業や業務の内容に応じて、クラウドやサーバーを利用できることも条件の1つとなります。また、利用者が、リモートワークにおいて大事なツールとなるパソコンなどをいつでも使用できるような環境をしっかりと整備しておくことも必要です。デバイスは雇用側が雇用される側に対して仕事用のものを貸与するかどうかということも重要なポイントとなります。
リモートワークが可能な職種1:事務職などのデスクワーク
リモートワークはどのような職種であれば対応できるかを事前に把握しておくと、導入がスムーズに進みます。まず、リモートワークが可能な職種の1つとして挙げられるのが、デスクワークです。デスクワークとは、机上で行う業務を主とするもので、事務職などが行う仕事を指します。ただし、必ずしも事務職が行う仕事だけを指すわけではありません。技術職などのほかの職種でも状況に応じて机上の業務が求められることもあるため、デスクワークをすることはあります。
デスクワークの具体的な業務にはさまざまなものがありますが、なかでも書類の作成やパソコンを使用して行う作業であれば遠隔勤務は可能です。たとえば、手書きデータの入力ならPCさえあれば場所を選ばずに仕事をすることができます。また、会議用の書類やプレゼン資料の作成なども、同じくリモートワークでできる業務です。また、電話やメールも基本的には場所を選ばず対応することができます。業務をデジタル化さえしてしまえば、100%を自宅で行うフルリモートではなくても、リモートワークでできる部分はデスクワークに多くあるのです。
リモートワークが可能な職種2:ライティングや編集業務
パソコンと一定の環境さえ整っていれば導入可能なリモートワークは、ライティングや編集業務でも取り入れることができます。ライティングとは、コラムや説明などの執筆をする作業です。ほかにも、webコンテンツ向けのライティングの需要も増えています。執筆する内容は、企業がどのような分野や業務に携わっているかによって変わってくるため、さまざまです。一方、編集業務とは情報を収集したり、収集した情報を整理・構成したりすることが仕事です。編集されたものは出版や通信、新聞などのメディアを通して発信されます。たとえば、書籍や雑誌などを作る場合であれば、取材によって集められた情報をまとめる作業だけではなく、取材や執筆の校正なども編集業務の一部です。
ライティングや編集は、書き上げたものを第三者がチェックすることが必須となるため、コミュニケーションが欠かせない業務となります。しかし、文章を作ることは自宅などでも行うことができ、仕事の多くの部分をひとりで完結できることが通常です。そのため、メールやチャットツールなどでコミュニケーションをきちんと取ることは求められますが、社内にいることにこだわる必要はありません。
リモートワークが可能な職種3:DTPデザイナーやオペレーター
DTPデザイナーやDTPオペレーターもリモートワークが可能な仕事として挙げることができます。ライティングや編集業務と同じように、人と会うことなく基本的にはひとりで業務を完結できるからです。そもそも、DTPとは「DeskTop Publishing(デスクトップパブリッシング)」の略で、パソコンを利用して作成するデザインを指します。デザインはグラッフィック系ソフトを使用して作り、利用するソフトはAdobe社のIllustratorやPhotoshopが主流です。そのほかに、3Dグラフィックソフトなどを使用する傾向も多く見られます。
DTPデザイナーが作成するのは、主に、ロゴやマークデザイン、CG、イラストなどです。ただし、ポスターや広告などを作ることもあります。写真やイラスト、文字などのレイアウトを考え、ソフトを使用しデザインを完成させるまでが仕事です。一方、DTPオペレーターは、DTPデザイナーが作ったデザインデータを印刷できる状態まで持っていくことが業務となります。データに修正や加工を入れて記事と組み合わせるなどして、すぐに利用できる形に完成させることが仕事です。
DTPデザイナーとDTPオペレーターは、共に「DTP」という言葉が付いているため、具体的な業務内容を混合する人は少なくありません。しかし、デザイナーはデザインをする仕事であるのに対し、オペレーターは印刷に適したデータを作成することに特化しているのが特徴であり、すみ分けされています。このため、印刷会社などで勤務していることが多い仕事です。
リモートワークが可能な職種4:webデザイナーやプログラマ
リモートワークが可能な職種には、パソコンやネット環境を整備することで仕事ができるようになるwebデザイナーやプログラマもあります。webデザイナーに求める必須条件は、グラッフィック系ソフトを使いこなせるスキルです。基本的なデザインを作る際に使用するAdobe社のIllustratorとPhotoshopの2つのソフトを使えることが求められます。デザインを作ったら、さらに、作成したデザインをベースにして、ブラウザ上に反映できるような状態へと形成していくコーディングを行わなければいけません。ウェブ制作の基本言語の1つであるHTML、HTML文書やデザインの見え方を指定するCSS、ウェブ上に動きを与える際などに利用されるJavaScriptといったコンピュータ言語によりwebサイトの構築を行うことが仕事です。
一方、「PG」と略されることもあるプログラマは、プログラム言語を使ってプログラムを組んでいくことが役割となります。ソフトウェアやシステムを作ることが仕事で、さまざまな業界で需要がある職種です。同じIT業界で活躍するシステムエンジニア、通称「SE」と混同されやすくなっていますが、行うことはまったく別であるため注意しなければいけません。SEはシステムのための設計書を作成するのが役割ですが、PGはSEが作った設計書をもとにプラグラム制作をすることが仕事となります。
リモートワークが可能な職種5:営業やマーケティング
一見すると向いていないようにも感じられる営業にも実は、リモートワークを導入することが可能です。たとえば、顧客訪問をする場合、事務作業をこなすためなどに訪問の合間時間を利用して会社に戻るケースは少なくありません。しかし、わざわざ時間をかけて会社に戻らなくても、カフェなどで事務作業を済ませれば、移動時間をカットできます。また、会社に戻る理由が業務の進捗状況の報告や取引先への連絡・相談のためというケースもあるでしょう。営業職は、社内外の人とのコミュニケーションを状況に応じて迅速に取ることが強く求められる仕事です。ただし、SNSなどを活用するなどしてこれらのコミュニケーションを取れるようにさえしておけば、リモートワークを採用することに問題はなくなります。
ほかに、マーケティングもリモートワークに向いている職種です。マーケティングは世の中のトレンドを探ったり、市場調査を行ったりすることが仕事となります。リサーチの結果から、顧客のニーズに合った商品やサービス提供の実現へ導くことが役割です。営業職と同じく、マーケティング業務もすべてを必ず社内で行う必要はありません。仕事の行動範囲で便利な場所にあるカフェなどを利用して社内業務を済ませてしまったほうが効率的です。マーケティングにもリモートワークを採用すれば、宣伝や広報活動を行うプロモーションなども含めて、会社に縛られない柔軟な行動がしやすくなります。
リモートワークに向いている人と向かない人のタイプは?
リモートワークを導入するための環境が整えられていても、働く人によっては上手く活かせる場合と活かせない場合があります。リモートワークは人によって向き不向きがあるからです。一般的に向いているとされるのは、自己管理ができる人です。たとえば、自宅で仕事をする場合には、テレビや本、ゲーム、ベッドなど仕事をさぼる誘惑がたくさんあります。そのため、仕事とプライベートな時間を自らできちんと分けることができるかどうかは重要です。さらに、仕事の時間配分や進め方、業務の進捗状況を自分でコントロールできることも大切なポイントとなります。上手にコントロールしながら仕事を進めていかないと、ダラダラと過ごして1日があっという間に終わってしまったり、無駄な作業に時間を費やしてしまったりして、非効率な作業となりかねないため要注意です。
加えて、そもそも、出勤をしなくても仕事ができるような専門性を持ったスキルを所有している人でなくては、リモートワークは難しいでしょう。また、ひとりで完結できる業務をこなす職種であっても、仕事をするうえでコミュニケーションを取ることは必須です。相手の行動が把握できない離れた空間にいるからこそ、きちんとコミュニケーションを取ることが重要となります。直接顔を合わせて会話するときと比べて、文字からだと相手の意図を読み取ることは難しいものです。そのため、メールなどのコミュニケーションを積極的に行おうとする姿勢が強く求められます。さらに、相手の言葉が何を伝えようとしているのか、仕事の指示や意図を正確に把握できる能力も必要です。
リモートワークに向いていない人とは、自己管理を上手にできなかったり、時間配分が苦手だったりする人です。また、チャットやメールを使って大事な連絡を取らなければいけないシーンも少なくないため、オンライン上でのコミュニケーションが苦手な人も不向きとなります。相手の顔が見えない分、相手が好感を持てるような言葉を上手に使って表現できることは大切なポイントです。乱暴な表現をしたり、わかりにくい説明しかできない場合には、円滑に業務を進めることは難しくなります。
リモートワークの求人に応募した際の面接はどうなる?
リモートワークの求人に対する面接の方法は、基本的に企業や職種によって異なっています。一般的には、面接だけを会社内で行う企業が多い傾向となっています。ただし、リモートワークが普段顔を合わせることのない働き方であることから、応募の段階のみならず面接のときから、まったく顔を合わせずに仕事をスタートさせるケースも少なくありません。海外の企業だと、テレビ電話などを使って面接をする場合もあります。テレビ電話を用いれば、都心や離れた地域に住む人が移動の負担なく地方にある企業の面接を受けることも可能です。また、忙しい時間の合間に面接を行うこともできるため、企業にとっては現在他社で就業中の優秀な人材を獲得するチャンスも広がります。
まとめ
一般的には、リモートワークを導入しやすいのはデスクワークです。ただし、上手に取り入れれば営業職などのような外回りの仕事にも向いています。リモートワークを成功させるポイントは、必要な環境や条件を考慮して、それぞれの企業に合った職種に導入することです。また、人によって向き不向きがあるためリモートワークに適した人材を選ぶことも重要となります。
リモートワークは、雇われる側にとってはライフスタイルや個々の事情に合わせて自由なリズムで仕事をすることができるなどのメリットが得られる働き方です。また、雇用側にとっても、通常では確保しにくい優秀な人材の採用チャンスを広げたり、新たな働き方の導入で会社を改革させる機会を作ることができたりなどさまざまなメリットがあります。ただし、新たな働き方を導入する際にはリスクがつきものです。効果的にリモートワークを導入するためにも、リモートワークに役立つ情報はこちらのメルマガを購読してしっかりとチェックしておきましょう。