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今後の企業戦略として導入したいテレワークの課題と解決策

働き方改革の一環として導入が進められているテレワークは、中小企業の人材不足を解消する方法としても高い注目を集めています。しかし、時間と場所にとらわれず、自由な働き方を提供できるテレワークにも、解決すべき課題がないわけではありません。たとえば、社員同士の連携不足や機密情報の管理に関する問題など、テレワークを導入するにあたっては解決しなければいけないことが多々あります。

テレワークは社員にも企業にもメリットの多い働き方であることは事実です。課題をしっかり解決できれば、企業戦略としても大きな意味を持つ制度だといえるでしょう。そこで今回は、テレワークという働き方の基本から、テレワークの課題、またそうした課題を解決するための方法などについて解説します。

テレワークは社員が会社以外の場所で働くことを認める制度

そもそもテレワークとは、会社など特定の職場に縛られずに働くことを認める制度のことです。テレワークというのは、「tele(離れた場所)」と「work(働く)」という英語が語源になっている造語です。もともとは車通勤による大気汚染を緩和する目的で、1970年代のアメリカで導入する企業が増えたといわれています。テレワークと似た用語としてリモートワークといった言い方も一般的です。

さて、一口にテレワークといっても、その意味や定義は決して単純なものではありません。広く会社以外の場所で働くことを意味するテレワークは、自宅に仕事を持ち込む在宅勤務だけでなく、移動中の電車や飛行機、宿泊先のホテルなどで行うモバイルワークなども範ちゅうに含みます。また、サードプレイスオフィス勤務という、会社が別途用意したコワーキングスペースなどで行う仕事も広い意味でのテレワークの一種です。

このように、テレワークは大きく分けて上記の3つの種類に分けることができます。同じテレワークでも、在宅勤務とサードプレイスオフィス勤務では働き方が異なるため、こうした違いを理解しながら柔軟に制度を導入するということが何より重要です。会社以外の場所で自由に働けるテレワークは、社員にも企業にもさまざまなメリットを与えてくれる制度です。

育児や介護など家庭の事情でやむを得ず離職した人材でも、テレワークであれば離職せずずに済む可能性が高まるため、環境による優秀な人材の流出を防ぐことにつながります。また、主に在宅勤務では、出勤の必要がないため、満員電車や交通渋滞など、移動にかかる時間やストレスを軽減することができます。そのことが、ひいては労働効率や生産性の向上にもつながり、社員だけでなく企業にも大きな恩恵をもたらしてくれるのです。

テレワーク導入の課題1:連携不足で社員が孤立しやすくなる

さまざまなメリットがあるテレワークにも課題はあります。そのひとつが、社員同士や社員と会社とのコミュニケーション不足が発生しやすいという点です。会社という場所以外で業務に携わることになるテレワークは、オフィスで働く場合に比べて社員同士が顔を合わせる機会も少なくなります。職場を離れて働いていても、その企業に属して働く以上は、個人ではなくあくまで会社の一員として業務に従事することになります。個人経営とは違って、会社ではさまざまな部署がチームを組んでひとつの仕事に取り組むということが多いため、社員同士のコミュニケーションが不足していると、かえって労働効率や生産性が低下してしまうことがあるのです。

また、テレワークによるコミュニケーション不足は、社員の孤立を招くという危険性もはらんでいます。通常の会社に出社しての業務であれば、職務の遂行に必要な意見を上司にうかがうことも可能です。しかし、テレワークでは、難問に直面したとき、それをひとりで解決しなければいけない機会も増えます。もちろん、ひとりで危機を乗り越えることができれば、その社員の大きな成長につながることもあるでしょう。しかし、チームワークによらない仕事の進め方は、完全成果主義に走りやすくなるという側面があり、企業の発展より自身の成果を優先するという構図ができかねません。こうしたコミュニケーション不足による社員の孤立化が進めば、結果として社員が働きにくい環境となってしまい、テレワークの大きなメリットを損なってしまうことにもつながります。

テレワークを導入するうえでは、社員同士や社員と会社とが円滑にコミュニケーションできる環境を整えておくことが大切です。特に急ぎの連絡が必要な時、コミュニケーション環境に不足があると、必要な情報がうまく相手に伝わらず、連絡ミスや対応の遅れを招くことにもなりかねません。会社とテレワークをしている社員との連携は、労働生産性を高めるために必須の条件であるため、まずはテレワークを導入できるコミュニケーション環境を整備することが重要になります。

テレワーク導入の課題2:管理者が就労の実態をつかみにくい

会社内から離れた場所で仕事を行うテレワークは、管理者が業務の実態をつかみにくいという側面があります。オフィスにいてこそ管理者も社員の勤務態度を逐一チェックすることができます。管理者は社員の勤怠を間近で確認することで、それを評価に反映して、昇給や昇進の材料にしていきますが、社内を離れて仕事をするテレワークではそれができません。就労の実態が正確に把握できなければ、社員に正当な評価を与えることも難しくなります。そうなれば、社員が会社に貢献した成果と、会社が社員に下す評価に隔たりが生まれ、ひいては社員が企業に対して不満を募らせる要因にもなりかねません。

また、社員の就労実態の把握は、労働力に対する適正な賃金の算出にも反映されます。テレワークを導入する際、勤怠管理システムの整備が不十分であると、社員に適正な賃金が支払われず、労働者にとって当たり前の権利を踏みにじることにもつながります。そのため、テレワークの導入に際しては、勤務実態を正確に把握するシステムの構築が不可欠です。管理システムの構築を図ることは、社員の評価だけでなく、企業の利益にとっても重要です。テレワークでは、たとえ社員が仕事を怠けていても、人事の側からそれを見抜くことは簡単ではありません。むしろ、それを逆手にとって、職務怠慢が横行してしまうという危険性もあります。

こうしたテレワーカーの怠慢を防ぐためには、勤務実態の正確な把握が必須の条件となるでしょう。それはテレワーク社員だけでなく、オフィスで仕事をする人の働きやすさにもつながります。テレワーカーとオフィスワーカーの評価に違いがあれば、社員同士での不公平感が募り、テレワークという制度自体に不満を持つ社員が増えてしまうかもしれません。そのような事態に陥らないよう、就労の実態をつかみにくいというテレワークの課題をしっかり解決したうえで、制度を導入するという体制が必要になります。

テレワーク導入の課題3:機密情報の管理の徹底が難しい

ICT(情報通信技術)は、テレワークの普及に欠かすことのできない技術です。実際、テレワークではPCやスマートフォンなどを介したやり取りが中心となります。しかし、PCやスマートフォンは、情報伝達や業務連携の利便性を確保できる一方、誰でも簡単に情報を扱えるという手軽さゆえ、機密情報の漏洩リスクが高まってしまうという側面があります。特にインターネットを介して機密情報をやり取りすることも多いテレワークでは、企業にとって大切な情報が外部に漏れてしまう危険性が大きくなることは避けられません。機密情報が漏洩してしまえば、会社全体の利益を損なうことにもなります。それだけに、よりいっそう機密情報の管理を徹底することが不可欠なのです。

ただ、情報漏洩を未然に防ぐためには、企業が情報管理システムを構築するだけでは足りません。それに加えて、テレワークをする人自身にも、情報管理を徹底させることが重要です。テレワークにおける情報漏洩は、何もインターネットを介したものだけではありません。PCやスマートフォンを紛失したことで情報が漏洩してしまったり、カフェなど第三者が閲覧できるような環境で情報を見られてしまったりなど、テレワーカー自身の不注意や不始末で外部に機密情報が漏れてしまったということもあります。こうした事態を防ぐためにも、研修などを通じてテレワーカー自身にもセキュリティ強化の意識をしっかり持たせておくことが大切です。

テレワークの課題解決にはツールやシステムの活用が有効

テレワークの課題を解決するためには、それぞれの課題解決に適したツールやシステムを積極的に活用していくことがとても有効です。たとえば、バーチャルオフィスシステムやWeb会議システムなどは、社員のコミュニケーション不足を解消するのに大きく貢献してくれます。バーチャルオフィスシステムとは、オフィスに見立てた仮想空間を構築し、そこに社員を集めて情報のやり取りをしていくというシステムです。音声や映像を使って、リアルタイムで情報を交換することができ、テレワークで不足しがちな社員のコミュニケーションを活発にする効果が期待できます。一方、Web会議システムは、チャット機能やビデオ通話機能を使って、Web上で簡単な会議をするためのシステムです。バーチャルオフィスシステムと比べて低コストで導入できるので、より手軽にコミュニケーションをとれるというメリットがあります。

社員の就労実態を把握するためにも、ツールやシステムの有効活用は欠かせません。クラウド型の勤怠管理システムは、テレワーク社員がボタンひとつで勤怠報告できるシステムです。テレワーク社員のデスクトップ画面を管理者が確認できるツールや、第三者によるなりすましを防ぐ顔認証機能など、勤怠管理システムにはさまざまな機能を持ったものがあります。社員の職務怠慢を防止すると同時に、なりすまし防止機能はセキュリティ面でもテレワークの円滑な導入に大きく貢献してくれるでしょう。

セキュリティという側面で見れば、仮想プライベート・ネットワークの利用やセキュリティソフトのダウンロードなども取るべき対策となります。仮想プライベート・ネットワークとは、オフィス内の暗号化されたネットワークを、自宅や外出先でも使えるようになるシステムのことです。仮想プライベート・ネットワークを適切に運用できれば、どこにいてもオフィスと同じネットワーク内で情報のやり取りができるため、悪意ある第三者に情報を盗まれるリスクを大幅に軽減することができます。

ただ、仮想プライベート・ネットワークは、あくまでネットワーク上のセキュリティシステムに過ぎません。したがって、もしテレワーク社員が使っているPC本体にウイルスが侵入してしまえば、そこから情報が漏洩してしまうこともあります。そのため、PC本体にもしっかりセキュリティソフトをダウンロードしておくのはもちろん、テレワーク社員のセキュリティ意識を高めておくことも重要です。

課題を解決できた場合に得られるテレワークのメリット

課題を解決できさえすれば、テレワークは大きなメリットのある制度です。特に人口減少で労働力不足が深刻化しているなかで、柔軟な働き方を提供するテレワークは人材確保に大きく貢献してくれます。とりわけ人口が少ない地方に立地している会社は、選べる人材の分母が小さいため、優秀な人を確保するのも一苦労です。その点、テレワークなら住んでいる地域にかかわらず、どこで暮らしていても仕事に従事してもらえます。地域に限定されずに人材を選べるなら、多種多様な人材の中から自社に合った人を採用でき、優秀で経験豊富な人材もより確保しやすくなるでしょう。

テレワークの導入は、コストの削減という意味でもメリットがあります。出社する必要がないテレワークでは、社員のためにデスクや椅子を用意する必要がそもそもありません。また、交通費の支給もなければ、空調や照明などオフィスのランニングコストも削減できるため、従来の働き方に比べて社員の維持にかかるコストを大きく減らすことができるのです。このように、テレワークは会社の運営という観点でも大きなメリットがあります。

また、テレワークは労働環境を改善するための有用な対策のひとつです。企業の働き方改革が進むなかで、社員の労働環境の向上は欠かせない項目だといえます。社員が働きやすい環境を作ることができれば、優秀な人材を確保するきっかけになるだけでなく、会社のイメージをアップさせることにもつながります。「社員を大切にする企業」というイメージが定着すれば、会社の営業活動にも良い影響を与えてくれるでしょう。

今後テレワークは企業戦略として導入していく必要がある

今後、労働人口の大幅な減少が見込まれる日本社会では、テレワークは単なる福利厚生のための制度ではなく、企業戦略のひとつとして積極的に導入していかなければならない制度です。労働人口の減少は、単に働ける人材が減るだけでなく、人々の働き方にも大きな影響を与える問題です。たとえば、このさき労働人口がさらに減っていけば、親の介護のために仕事を辞めなければいけなくなる人も増えてくるでしょう。また、核家族や夫婦共働き世帯が増えているなか、仕事と子育てを両立することも難しいことです。

このような状況下では、会社に出社して一日中そこで働くというのは現実的ではありません。もし、企業側が柔軟な働き方に対応できず、社員をオフィスに縛るような対応をしてしまえば、優秀な人材はどんどん離れていき、企業自体も存続していくことが難しくなってしまうでしょう。だからこそ、テレワークという働き方は、これからの人口減少の時代のなかで重要な意味を持つ制度だといえるのです。

オフィスに縛られず、柔軟に働けるテレワークは、多様な人材に活躍の場を与えられる働き方だといえます。家庭の事情でやむを得ず離職する人も多いなか、人材の確保のために大切なのは、いろいろな境遇の人が活躍できる環境をまずはしっかり整えておくということです。テレワークは、まさにそのための環境整備に適切な制度です。このさき人口減少がますます進行すれば、新しい働き方に対応できない企業が競争を生き抜いていくことも難しくなっていきます。テレワークには課題も多いですが、だからこそいち早く導入を進めて、新しい時代への準備を進めておくことが重要なのです。

まとめ

優秀な人材を確保するために、テレワークの導入は必要不可欠なプロセスであるといえます。ただ、テレワークには課題も多く、予備知識や事前準備なく導入してしまうと失敗するリスクも増大してしまいます。テレワークの導入にあたっては、まず課題をしっかり克服するということが重要です。ツールやシステムを有効利用して、コミュニケーションの不足や機密情報の漏洩が発生しないような体制を整えましょう。また、社員の意識改革も徹底させるなど、会社全体で課題解決に取り組むことも不可欠です。

導入に成功すれば、テレワークは企業戦略としても大きな成果を発揮してくれる制度です。社員の労働環境が改善し、優秀な人材の確保や企業のイメージアップにもつながります。これからの時代に適した働き方でもあり、いち早く導入を進めていくことが時代を先行することになるはずです。

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