日本でも増えているテレワーク!海外の普及率や定着の秘訣は?
テレワークは世界各国で注目されており、また年々導入が進んでいる勤務形態です。日本では国が推進していることもあり、導入をはじめたり検討したりしている企業は増加傾向にあります。しかし、国が推進しているものの、深く理解せずにいきなりこちらの勤務形態を取り入れるのはリスクがあると感じるのではないでしょうか。すでに導入されて成功した事例があれば、テレワークについて考えてみたいという企業も多いのではないでしょうか。そこで今回の記事では、海外でのテレワーク普及率はどれくらいなのか、きちんと成功しているのかなどを解説していきます。また、テレワークのトレンドや定着させやすい秘訣はあるのかなど、多くの企業が抱える疑問に対しても解説します。
テレワークとはどんな働き方?日本が推進するテレワークの意義
まず、テレワークとはどのような働き方を指すのかを見ていきましょう。とりわけ日本が進めるテレワークは、他国とは若干異なる点もあります。テレワークの定義は、情報通信技術(ICT)を利用した自由で柔軟性のある働き方のことを指します。語源は「tele(離れた場所)」と「work(働く)」で、テレワークはその2つを合わせた造語です。こちらの言葉は比較的さまざまな国で用いられており、アメリカでもフランスでもシンガポールでも通じます。テレワークにはいくつかの種類があり、多くの人がまず思い浮かべるのは在宅勤務なのではないでしょうか。在宅勤務とはその名の通り自宅で勤務することを指し、通勤を伴ないません。
また、モバイルワーク、あるいはモバイル勤務と表現することもある勤務形態もあります。こちらは顧客の元へ出た先や移動中などに、パソコンや携帯電話などの通信設備を使って働く形態です。さらに、サテライトオフィス勤務というものもあり、これは本社と通信できる最低限の設備を備えた遠隔地のオフィスなどに勤務する形態です。サテライトオフィスの例では、地方の企業は都心部に、あるいは都市の企業が地方に小さなレンタルスペースなどを借り、数人の従業員を配置して電話対応や接客あるいは通常の業務などをさせます。そのため、この勤務形態では決まった場所に定期的に出勤するのが一般的です。
なぜこのような働き方を日本が推進するかというと、少子高齢化によって人手不足が叫ばれるなかで、子育て中や地方に住んでいるなど何らかの理由でフルタイムやパートタイムで勤務をすることが難しい人材も、働きやすい環境づくりを目指しているからです。特に在宅勤務者は通勤の必要がなく、手が空いた時間に集中して仕事ができるため、一般的なパートタイマーよりも柔軟な働き方ができるでしょう。さらに、テレワークをうまく使えば、多様な人材の確保やさまざまな経費の節減、ひいては生産性の向上にもつながるなどのさまざまな効果が期待できます。加えて、ワーク・ライフ・バランスの向上が実現しやすく、また一般的に人口が少なく働き手も同様に少ない地方の地域活性化にも役立つことなどが、日本が国をあげて推進する理由といえるでしょう。
別の観点から見ても、テレワークを推進すべき理由があります。通勤をしないことによる環境負荷の軽減は、長い目で見ると社会全体にプラスに働きます。もし、柔軟な働き方の推進により都心の通勤ラッシュや交通渋滞が改善されれば、環境負荷を大きく減らすことができるでしょう。また、企業の機能を本社に一極集中させないことにより、非常災害時の事業継続やコストの削減などのメリットもあります。テレワークは勤務者だけではなく実施する企業にとってもメリットが多いのが、この新しい働き方の良い点なのです。
テレワーク普及率と動向その1「もっとも普及しているアメリカ」
世界の中でもっともテレワークが普及している国がアメリカです。企業のテレワーク導入率は85%と世界の中でもっとも高く、テレワーク人口は全就業者のおよそ20%にも上ります。また、フルテレワークも34%と高い数字を示しています。アメリカでここまでテレワークが広まった背景のひとつに、アメリカでは従来からジョブ・ディスクリプションにより個人の仕事範囲と責任が明確に定められていることが挙げられるでしょう。テレワーク従事者は何でも幅広くやるのではなく、企業から決められた仕事のみを粛々とこなします。テレワーク勤務者は成果や目標達成によってきちんとした業績評価がなされ、報酬も成果性が取られています。
また、アメリカではホワイトカラーエクゼンプションがしっかりと機能しているため、頭脳労働者として働くホワイトカラーには労働時間管理の制約がありません。その結果、自分の裁量により望むまで仕事ができるのもテレワークを後押ししています。企業にとってもテレワークの導入は、オフィススペースの縮小などのコスト削減につながるため、アメリカでも国をあげて推進をしているのです。たとえば、2010年に連邦政府はテレワーク強化法を成立させ、全職員にテレワークを普及させています。これには9.11の影響もあり、大規模な災いに見舞われたときでも機能を分散させておくことで壊滅的な被害を避け、事業継続を図る狙いがあります。
テレワーク普及率と動向その2「カナダも普及率は高い」
カナダもまたテレワーク普及率が高い国のひとつです。テレワーク人口は全就業者のおよそ19%を占め、テレワークを導入している企業の割合は22%、またフルタイム就業者のなかでもテレワークが可能な人の割合もおよそ22%です。カナダの雇用制度はアメリカに近く、法による規制は特にありません。しかし、労働時間は年間1700時間までと決められているため、その範囲のなかで自分の裁量で働くことが可能です。カナダには柔軟な働き方ができる労働者がおよそ47%いて、また柔軟な労働時間で働ける人もおよそ42%います。このため、統計から考えるとテレワークはカナダ国内においても今後もますます広まっていくことでしょう。
テレワーク普及率と動向その3「ヨーロッパは低い傾向」
ヨーロッパ諸国のテレワーク普及率は、北アメリカ2カ国と比較すると低い傾向にあります。しかし、後述するアジア諸国よりも普及しているため、今後はアメリカ並みに普及する可能性も残されています。ヨーロッパのなかでもっとも高いテレワーク普及率をほこっているのはアイスランドの33.6%です。内訳は時々テレワークをする人が26.5%で、常に行っている人が7.1%となっています。
イギリスは長時間労働の習慣がなく、すでに働き方に柔軟性がある国です。加えて、雇用者に有利な労働法が制定されているため、雇用が流動的な点もテレワークがそれほど普及していない理由として挙げられるでしょう。イギリスのテレワーク従事者は24%で、EU加盟28カ国のなかでは第6位につけています。
逆に、フランスは労働者を保護するための管理が従来から行われており、すでにワーク・ライフ・バランスが実現されつつある社会を形成しています。テレワークを導入しなくても柔軟な働き方が普及しているためか、従事者はトータルで19.1%、EUのなかでは上から9番目の普及率です。ドイツもまたすでにジョブ・シェアリングが成功している国で、特別にテレワークを国が後押しているという雰囲気はありません。長時間労働者も少なく、労働時間に関する問題は政策課題でもなくなりました。テレワーク従事者は10.9%と低く、これはEU28カ国中17位で、EUの平均である13.5%を下回ります。
一方、フィンランドなど基本的に通勤時間が長い地域では、積極的にテレワークを推進する動きがあります。この国のテレワーク従事者は24.9%で、EU内では5位につけています。フィンランド国内では働き方が変化している傾向にあり、労働集約型から知識をベースとしたサービス業への転換は、テレワークと相性が抜群です。
ヨーロッパの主要国は労働時間の管理など労働者に対する保護がすでに進んでおり、テレワークの導入に依存する傾向が低いことがわかりました。その一方で、フィンランドのように国が推進しているところもあります。統計にあるなかで1番テレワーク率が低いのはルーマニアで、従事者は0.6%しかいません。アイスランドとの差は33ポイントにも上り、欧州としてひとくくりにするのはなかなか難しいのが現状となっています。
テレワーク普及率と動向その4「アジアもまだまだ低い」
日本を含むアジア諸国のテレワーク普及率は、ヨーロッパ諸国よりもさらに低いです。韓国では少子化が深刻な社会問題のためワーク・ライフ・バランスを向上させることに努めていますが、目標とした数字の実現には至っていません。韓国のテレワーク普及率はまだ10%程度と低く、公務員を中心に現在も普及を進めている状態です。
また、シンガポールでもテレワーク普及率は高くはありません。伝統的に固定時間制度での労働が強く残っているため、柔軟な働き方に対する理解が低いことも普及を妨げる要因です。テレワーク導入企業率は民間全体の5.4%となっています。一方、移民が多い国であるシンガポールは、労働の3割は海外移住者に依存しており、人手不足を解消するために女性の活用を積極的に行なっているのが特徴です。テレワークのほか、パートタイムやフレックスタイムなど、柔軟な働き方を推進しています。
日本では11.5%の企業がテレワークを導入しており、今後も導入予定の企業は3.5%あるとされています。これは世界的に見て決して高い数字ではないものの、アジアのなかでは高いほうとなっています。国も積極的に導入の後押しをしていますが、テレワーク人口は全就業者の3.9%しかいません。在宅のテレワーカーが増えれば交通渋滞を緩和させられる効果もあることから、東京オリンピックが契機となり、今後テレワーク勤務者が増えることが予想されます。
海外でのテレワークのトレンドは?どのような仕事が多いのか?
テレワークに関しては特に海外でのトレンドといえるような目新しい動きや職種は見られませんが、フルテレワークで海外在住のスタッフを雇用するような場合、面接はテレビ電話で行うこともあります。つまり、雇用前から現地に赴く必要はなく、すべて自宅で完結できるケースもあるのです。このことから、日本にいても海外で働くことが可能となり、働き方の可能性を広げてくれます。しかし、インターナショナルな環境でテレワークを行う場合、時差や文化の違いなどがあることに留意する必要があります。納期がある仕事の場合、時差がネックになる場合もあるので注意しましょう。また、テレワークは情報通信技術を活用する働き方ということもあり、デスクワークが主流です。そのため、プログラマーやシステムエンジニア、ライター、マーケティング従事者などの職業でテレワークに従事する人が多くいます。
トレンドマイクロ社にならうテレワーク定着の秘訣とは?
テレワークは導入したら絶対に成功するというものではなく、やり方によっては利用者がいないなどの理由で失敗に終わることもあります。そこで知っておきたいのは、テレワークを定着させたトレンドマイクロ社の例です。同社はセキュリティソフトやサービスを手がける会社で、世界30カ国で事業を展開しています。同社がテレワーク制度を開始したのは2015年1月からで、はじめは国内拠点の700名ほどの従業員のうち数十名が参加しました。これにより、時短で働いていた従業員もフルで働けるようになりました。
しかし、スタート時は一部の限られた従業員を対象にしたため、彼らがどこか負い目を感じやすい状況が生まれてしまい、なかなか定着しにくいという事態が発生しました。そこで社内全体の意識を変えて特別感を払拭することが重要だと考えた同社は、政府主催の「テレワーク・デイ」に全社で参加することを決めたのです。同社が参加を決定したテレワーク・デイとは、東京オリンピックの開会式である2020年に7月24日に実施予定のもので、各団体や企業が参加し、交通渋滞や混雑が予想されるこの日に一斉にテレワークで通勤を控えるという試みです。
2017年7月にもテレワーク・デイが行われ、その際には同社から245人が参加し、内198人がフルタイムでテレワーク勤務をしました。これにより社員の意識改革が進み、テレワークは特別なものではないという認識が共有されていきました。現在同社でテレワークを活用している従業員はおよそ100人いて、ほかの従業員も空席が目立つオフィスを気にすることはなくなりました。
まとめ
海外においてテレワーク普及率がもっとも高いのはアメリカです。ヨーロッパではすでに労働環境の改善が進んでおり、テレワークに依存しない労働者保護の管理体制をとっている国が多いことから、テレワークの普及率はそれほど高くはありません。しかし、一方で通勤距離に問題がある地域などではテレワークに力を入れている傾向があり、ヨーロッパをひとくくりにするのは難しいほど各国でばらつきがあります。また、アジア諸国はテレワーク普及率が軒並み低く、日本においては社員全体の意識を変えていくことが普及率を上げる秘訣といえるでしょう。
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