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テレワークが日本であまり普及しない5つの理由とは?

「テレワーク」という言葉が聞かれるようになりましたが、日本は海外と比べるとテレワークが普及しているとは言えません。テレワークは外に出て働けないという人や災害があって交通が麻痺して出勤ができないという人にとって最適な仕事の仕方です。特に日本は災害大国ということもあり、テレワークを導入したほうがより仕事がしやすくなると言われています。時間や場所にとらわれずに遠方でも仕事ができるということからも注目を集めています。しかし、検討しているという会社はあるものの導入が進んでいないのが現状です。多くの利点がありながらも普及しないのはどうしてなのでしょうか。この記事では日本でテレワークが普及しない5つの理由と海外での成功事例について紹介します。

グローバルでのテレワークの普及状況とは

日本では海外と比較するとテレワークの普及率が低いです。また、逆にかなり普及している国もあります。これにはそれぞれの国の背景が関係していると考えられています。たとえば、普及率が高いアメリカやカナダ、フィンランドではもともと労働時間の管理規制が緩く、柔軟な働き方が普及しやすいという背景があります。リモートワークや自由で柔軟な働き方をもともと導入している国からすると、「テレワーク」というものに大きな違和感を感じることなく、むしろ今までよりも働きやすい労働形態だと認識されているということもあるのでしょう。

普及率が中程度なのは欧州です。これは労働者保護のため、労働時間の管理規制も緩く、そもそも労働時間が短い傾向にあるため、テレワークのニーズが生まれにくいということにあります。

普及率が低いのは韓国やシンガポールです。長時間労働が定着していて、人によって生活スタイルが異なります。日中仕事をしているという人もいれば、夜に仕事をしているという人もいます。韓国ではリモートワークのことをスマートワークと呼んでいます。日本と同様に行政主導でリモートワークの推進を勧めていますが、導入が思うように進まないという現状があります。日本を含め、これらの国は柔軟な働き方も根付きにくいという傾向があります。日本の普及率は中から低の間に位置していると言われています。

特に日本は残業を当たり前に行う国で、更には「カロウシ」という言葉が生まれ、今では世界に通じる言葉になってしまいました。それほどワークホリックになりやすい環境の日本でテレワークを導入してしまうと、オフの時との区別がつきにくくなり自宅でも仕事中毒になって、出勤しないことで精神的な不安を感じてしまう人が増える可能性も心配されています。こうしたことからも世界の国と比べるとテレワークが普及しやすい国とは言えません。

日本で普及しない理由1.会社への帰属意識が強い

日本の労働者は、もともと会社への帰属意識が強いといわれています。自分がどこに所属しているのかということに重きを置く人も多いこともあり、テレワークのように会社に行かずに個人で仕事をするという感覚がつかめないために普及が遅れているという状況があります。また、日本人はチームでの仕事が得意であり、個人での仕事が苦手な傾向にあります。個人で何かをするということが苦手で、まとまって繋がっていないと不安になるという民族性が影響していると考えられます。

日本は特に他の国と比べて仕事に対する自信が無い国だともいわれています。そのため、リモートワークを行うことによって会社への帰属意識が少なくなることで更に仕事に自信を持ちにくくなったり、自分の居場所が無いように感じたりして不安になるといったようなことが起こりやすくなります。もともと日本人は自己肯定感も低いといわれているので、リモートワークが導入されることにより、自分を定義することができなくなってしまう人が続出し、自分を認められなくなったり、生きる意味を見いだせなくなったりする人も増えるのではないかと考えられています。

これからの時代は個人が尊重されるとも言われています。日本では力のある個人がチームに所属することによって意見が言えなくなってしまい、本来の力を発揮できないということも少なくありません。そうした背景から、労働者個人の力をより発揮できる選択肢として、リモートワークが導入されれば、社会全体の生産性の向上も期待できると考えられます。

日本で普及しない理由2.従業員管理が難しい

リモートワークは従業員管理が難しいと言われています。特に日本では、出勤してタイムカードを押してから一日が始まるという風土が根付いてきました。また、仕事中は実際に顔を合わせて仕事の進捗状況を把握するということが当たり前です。しかし、リモートワークの場合には目の前で仕事状況を管理できないことから、進捗がわからず作業に時間がかかってしまうのではないかと考える経営者も多いようです。また、業務の進捗管理が簡単ではないため、上司としての責任の取り方も難しいという意見もあります。

加えて、リモートワークでは顔を合わせてのコミュニケーションの機会が減るということも懸念されています。日本ではフェイス・トゥ・フェイスの関わりを重要視する風潮があります。仕事ではまずは直接自分の足で現場に赴き、人に会いに行き、話をしてくるということが日本人の仕事のやり方です。

しかし、リモートワークを導入するとオンライン上のみのやりとりになっていまい、人と人が繋がって仕事をするという感覚が少なくなります。更には、人とのつながりが希薄になりやすく引きこもりになってしまったり、人の目がなくなることで仕事に集中できなくなったりするのではないかと心配の声もあります。こうした声を反映して、企業によっては、在宅での業務に監視カメラをつけている場合もあります。しかし、労働者からすると見張られているような気持ちになり仕事がしにくくなるという意見もあります。

こうしたことから企業は前向きに検討できず、どちらかというと「リモートワーク導入に関しては慎重に判断する」としている会社の方が多いのです。

日本で普及しない理由3. プライベートとの区別がつきにくい

仕事とプライベートの線引きが曖昧になることを心配して、リモートワークを導入しないという企業もあります。確かに、本来プライベートの空間である自宅で仕事を行うことで、気持ちの切り替えが難しくなるケースが多くなるかもしれません。

外で仕事をし、家では休むということが当たり前の生活をしてきた人にとって、リモートワークは自宅に仕事を持ち帰っているような気持ちになってしまい、家でリラックスできない可能性があります。もともと家が休む場所という位置づけである人にとっては、居住環境を仕事仕様にするということも難しく、満足に仕事ができるスペースを確保できない人もいます。

日本では在宅という業務形態が、まだメジャーではありません。そのため、他の社員とは異なる形で仕事をしている状況を「負い目」として感じてしまうこともあるかもしれません。自分だけ自宅で出勤もせずに怠けながら仕事をしているような気がしてきてしまい、罪悪感に苛まれる人もいるでしょう。こうした背景から、在宅の仕事をしていることで、仕事の成果を求める気持ちが根を詰める行動に繋がりやすくなり、外で働いているときよりもワークホリックになりやすい傾向が出てきてしまいます。

また、リモートワークは家族からの理解が得られにくいという傾向もあります。これは自宅に仕事を持ち込むことを家族が快く思わないという場合です。周囲の理解が得られないと十分に仕事に集中することはできません。また、小さい子どもが自宅にいる状況であれば、仕事に集中するということ自体が難しいでしょう。

日本で普及しない理由4.テレワークできる仕事が少ない

テレワークをしたいと思っている人ももちろんいますが、そもそも、テレワークできる仕事が日本には少ないという現状があります。中小企業では、多くの場合、電子データではなく紙を使っているなど、大手企業と比べても業務の電子化、効率化が進んでいません。そのため、リモートワークよりもデスクワーク、いわゆる書類を使った仕事の方が多いため、テレワークが普及しづらいということもあります。

また、顔を合わせての業務が中心であり、オンラインでのテレビ会議やチャットでの報告に抵抗感が強いのも特徴です。日本人は空気を読むのが得意だといわれますが、オンラインを通じての連絡は顔が見えにくく、お互いの気持ちが伝わりにくいこともあり、あらぬトラブルにつながるのではないかという懸念の声もあります。

こういった問題は、経営者や社員の意識改革、業務の電子化を行った上で、トライアル的にテレワークを導入していくことで打開の方向へ向かうことができます。

日本で普及しない理由5.労災やセキュリティへの対策が大変

テレワークが普及しない理由として、どこまでが労災になるのかの線引きが難しいということも挙げられます。たとえば、在宅で業務による作業で怪我をした場合は労災になるが、申請をせずにサテライトオフィスに行く途中で怪我をした場合は認定が難しいと言われています。

また、テレワークにはセキュリティ問題が課題としてあり、たとえば、在宅勤務で勤務者の管理ができないことによる情報漏えいやインターネットを使って業務を行うことでの外部からの不正アクセスなどが考えられます。

リモートワークを取り入れたいと前向きに検討している会社でも、この5つ目の理由から導入を断念するというケースも少なくありません。

海外での成功事例1.従業員ほとんどがリモートワークの会社

Automattic社は2003年に設立されました。この会社は世界で最も利用されているブログのプラットフォーム「ワードプレス」を運営しています。本社はサンフランシスコにあり、325名いる社員のほとんとは完全在宅勤務で、世界36カ国で勤務しています。

地域を問わず採用ができるため、人材を獲得しやすいということもあり、多くの国から優秀な人材を採用しています。面接もオンラインチャットで実施することで、労働者がわざわざ本社に赴く手間や時間を省いています。

また、Automattic社では同じ時間帯に勤務する社員をメンターとして新人教育を実施しているのも特徴の一つです。新人育成というと、日本ではOJTが一般的で時間も労力もかかることから会社では大きな負担にもなります。リモートワークを導入するに際して、OJTをどのように行っていくのかということも大きな課題となっている企業も少なくないでしょう。Automattic社では勤務時間というものは特に設定していません。これは海外各地で働くメンバーが多いという理由からです。これだと、ますますOJTがしにくいのではないかと考える人もいるかもしれません。しかし、Automattic社では決められた時間に仕事を行うことはないものの、同じタイムゾーンに属している社員を新人のメンターとして指名し、日頃から密接にチャットを行うことでOJTを行っているのです。それぞれのワークスタイルに合わせてOJTを行うプランなので、無理なく進められるという利点があります。

Automattic社では年に1度、全員が集結するイベントを実施し、全体のチームワークアップや絆を醸成しています。リモートワークで懸念される人とのつながりの希薄さやチームワークの育成不足などもこうした独自の対策によって解決しているのです。

海外での成功事例2.物理的なオフィスを持たない会社

In Visionの創業は2011年で、リモートワークを基本に設立された会社です。従業員700名のウェブデザインやプラットフォームデザインを手掛ける会社で、物理的なオフィスは持たず全員が世界各地でリモートワークを行っている会社です。

業務の特性上、すべてパソコンで仕事を遂行でき、お金のかかるオフィスを持たないことで大きなコスト削減を実現しています。オフィスの維持には大きな費用がかかります。特にIT関係の会社だとシステム管理はもちろんのこと、マシンの維持のためにも空調整備にもお金がかかります。オフィスを持たないことでこうしたことにコストをかけずにすみ、他のことに資金を運用できます。

IT業界では優秀な技術者が一人でも多く必要ですが、リモートワークにすることで世界中から優秀な人材を雇用できます。業務の自由度も高く、従業員がワークライフバランスを取りやすいということもあり、リモートワークのメリットを存分に活かした企業展開を行っています。

まとめ

リモートワークを日本で普及させるためには、経営者や従業員の意識改革やリモートワーク業務のためのインフラ整備が必要不可欠です。確かに、会社への帰属意識の高さや従業員の労務管理の問題、プライベートとの区別がつきにくいこと、テレワークできる仕事が少ないこと、労災やセキュリティの対策が不十分であることなど、導入するには多くの問題点や懸念があります。

しかし、リモートワークは導入している企業が日本ではまだ少ない分、先駆けて実施すれば先進的な企業としてイメージアップすることができ、更には国内外から優秀な人材を集めるきっかけにもなるでしょう。日本の根強い固定観念に切り込みながら新しい常識を作り出していくことが、これからの時代の経営者には必要な能力だといえるでしょう。

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