テレワーク導入では就業規則の変更も必要!大事な7ポイントとは
テレワークを導入する会社が増えているため、自社での導入を検討している経営者や人事担当者は多いのではないでしょうか。しかし、実際に導入するとなると、就業規則を整えなければいけません。きちんとしたルール作りをしてテレワークを運用しなければ、さまざまなトラブルが発生するリスクがあるのです。テレワークは法律によって条件や基準などが設けられており、それにしたがわなければいけません。適切な環境を整えてからテレワークを導入しないと、法律に違反してしまうケースもあるのです。また、環境を整えることで、さまざまな問題を未然に防げます。そこで、テレワーク導入のための就業規則変更の必要性や押さえておきたいポイントについて解説します。
テレワーク導入する際には就業規則も見直しが必要
テレワークは労働基準法の対象となっており、厚生労働省によって、テレワーク導入の際に就業規則を特別に規定することが定められています。就業規則本体に附則するパターンと、テレワーク用に就業規則を新設するパターンがあるのです。いずれの場合も、作成した就業規則を所轄労働基準監督署に届ける義務があります。また、テレワーク勤務で就業規則が必要になるのは、常時テレワーク勤務者が10人以上いる場合です。ただし、テレワーク勤務者が10人未満であっても、テレワークのための就業規則を用意しておくことは必要でしょう。将来的にテレワーク勤務者が増える可能性もあるため、就業規則を見直すことは無駄にはなりません。
テレワークのための就業規則には、さまざまな規定を定めることが必要です。就業規則の内容は労働基準法に基づくものでなければならず、慎重に見直すことが求められます。また、変更や新設された就業規則の内容を従業員に周知させることも重要でしょう。就業規則の内容は、従業員の利益に直結する重要なものだからです。従業員への周知がなければ、就業規則には法的効果が認められないため注意しましょう。
ポイント1.テレワークを認める勤務条件
就業規則にはテレワークを認めることに関する条件を定めておきます。条件が決まっていれば、テレワーク勤務者の数が増えるのを防ぐ効果があるのです。条件として規定される内容には、さまざまなパターンがあります。たとえば、通勤をすることが困難なやむを得ない事情があるケースです。育児や介護などでどうしても在宅で仕事をしなければいけない社員などが当てはまります。また、入社から一定期間が経過していることを条件とすることは多いです。入社したばかりの社員では、仕事のノウハウや信頼がないため、テレワークを認めるとリスクがあります。与えられた職務内容が自宅で行うことができるものであることも条件となるでしょう。
また、社員が勝手にテレワークをするのではなく、会社がテレワークに適当であると認め、許可することも条件として重要です。さらに、テレワークを許可するための手続きの内容についても定めておきます。申請書を提出するタイミングや必要書類などを決めておくのです。また、テレワークを認めた社員に対して、一定の頻度での出勤を義務付けるケースもあります。会社とコミュニケーションをとる機会を強制的に設けておくことで、テレワークのデメリットの一部を解決できるのです。
ポイント2.労働時間やテレワーク勤務の期間
テレワーク勤務者の労働時間や期間を決めておくことも大切です。特にテレワーク勤務者の労働時間が問題となるケースはよくあります。テレワークの場合、労働管理がしづらいというデメリットがあるのです。出勤や退勤する必要がなく、仕事の時間とプライベートな時間が混在しやすい状態で仕事をします。そのため、1日にどのくらい仕事をしたのか、判断が難しくなってしまうのです。労働時間は給与に影響し、深夜労働や休日労働した場合には賃金を割増する必要があります。テレワーク勤務者の働き方について、厳密にルールを決めておかないと、給与を決定する際に問題が生じてしまうのです。また、いつまでもテレワークを続けさせるわけにもいかない場合もあり、期限を決めることも必要でしょう。
労働時間については、事業場外労働のみなし労働時間制の適用の可否が重要です。みなし労働時間が認められれば、労働時間の算定が困難という問題が解決されます。ただし、みなし労働時間制の適用には厳格なルールがあり、テレワーク勤務者に適用できるかどうか判断する必要があるのです。また、深夜労働と休日労働の扱いについては、テレワーク勤務者に一切禁ずるというパターンがあります。あるいは、事前に許可を得た場合にのみ認めるケースもあります。期限については、開始から○○カ月までと決めておき、期間中でも理由がなくなったり会社からの指示があったりすると終了するというルールが考えられます。
ポイント3.勤務場所
在宅勤務者の場合は勤務場所は自宅となりますが、場合によっては自宅以外の勤務を認めるケースもあります。サテライトオフィスやその他、外での勤務も可能とすることで、生産性が上がる場合があるのです。ただし、テレワークでは勤務管理することが困難であり、情報漏えいのリスクが高まる点には注意しましょう。特に、いろいろな場所で働くことを認めてしまうと、情報漏えいする可能性が高まってしまいます。情報漏えいのリスクを下げるためには、勤務場所は在宅のみに限定しておくことが望ましいでしょう。事業場外労働のみなし労働時間制を採用するためには自宅で仕事が行われることが必要な点からも、勤務場所は自宅に限るほうがよいでしょう。
たとえば、サテライトオフィスで仕事をする場合、自宅以外の通信環境を利用することになります。場合によっては、きちんとしたセキュリティ環境が整っていない可能性もあるでしょう。また、不特定多数の人が利用する施設で仕事をすると、重大な情報を盗み見られるリスクがあります。大事なデータの入っているメディアの紛失や盗難などで情報流出することもあるのです。仕事場所が自宅に限定されれば、さまざまなリスクへの対策ができ、会社としても安心できます。
ポイント3.人事評価制度や各種手当
オフィス勤務者とテレワーク勤務者で、人事評価制度や各種手当の扱いが異なるケースがあります。人事評価制度で異なるルールが適用されたり、各種手当の取り扱いが変わる場合には、しっかりと就業規則に明記しておきましょう。たとえば、通勤手当や残業手当の取り扱いは、オフィス勤務者とテレワーク勤務者でどうしても異なるルールを用意しなければいけません。また、どのようにルールが変わったのか、従業員に丁寧に説明して周知させておく必要もあります。
たとえば、通勤手当については、テレワーク勤務者には原則として支給しないほうがよいでしょう。また、事業場外の労働みなし時間制を採用しているならば、残業手当の支給もしないのが一般的です。皆勤手当については、在宅勤務者であっても支給されるべきものですが、どのような判断を下すのかルールを決めておく必要があります。
人事評価制度については、成果を重視した評価にするパターンが考えられるでしょう。ただし、成果のみを過剰に重視するとモチベーションを下げてしまう可能性もあります。そこで、テレワーク勤務者の業務プロセスを評価する仕組みづくりも必要となるでしょう。たとえば、ネット上でコミュニケーションをとれるツールを使う、定期的に出社して報告してもらうといった方法が考えられます。テレワーク勤務者のやる気を削がない人事評価制度が求められるのです。
ポイント4.勤務者の費用負担
テレワーク勤務者が在宅で仕事を始めるためには、特別な環境を用意する必要があります。業務で必要となるパソコンなどの端末や周辺機器について、会社が貸与するのか、個人所有のものを使わせるのか決めておく必要があります。あるいは、会社が負担して新しく機器を用意して貸与するケースもあります。テレワーク勤務者の仕事内容によっては、特別な機器が求められることもあるでしょう。さらに、在宅の場合は、通信回線費用や水道光熱費などの費用負担についても考える必要があります。当人に費用負担させる場合には、就業規則にその内容を追加しなければいけません。
費用負担については、それぞれの会社によって考え方が大きく異なります。すべての費用を本人に負担させるケースもあれば、できる限り会社が負担するケースもあるのです。本人の費用負担が大きいと、モチベーションを低下させることになり、テレワーク勤務者を申請する人がいなくなる可能性もあります。しかし、すべてを負担してしまうとコストが増大してしまい、テレワーク勤務者を増やすメリットが減ってしまうでしょう。細かな経費については、その都度会社側で判断する方法もあります。必要経費について申請させるためのシステムを用意するケースもあるでしょう。遠方からでも経費の申請ができるシステムがあれば、紙の申請書を提出させるよりコストがかかりません。
ポイント5.社内教育や研修
テレワークだと社内教育や研修の機会を与えにくくなります。テレワーク勤務者の仕事の生産性を高めるためには、新しい技術やノウハウを学ばせることは大切です。そこで、通常とは異なるテレワーク勤務者を対象とした教育や研修を実施するケースがあります。その場合は、通常の勤務者とは異なるので、きちんと就業規則にその内容を追記しなければいけません。テレワーク勤務者は能力開発などについて、不安や不公平感が生じてしまうケースがあります。そのため、特別な教育機会を充実させることは大切です。
たとえば、テレワーク勤務者は、会社の福利厚生施設を利用する機会が少なくなってしまいます。福利厚生施設で研修やセミナーなどを実施している会社は多いでしょう。そこで、テレワーク勤務者のために代替措置を講ずることによって、不公平感をなくせます。たとえば、インターネットを活用して研修を受けられる環境を用意することが可能です。研修を録画しておいて、参加できなかった人に視聴させることもできます。ただし、こういった特別な措置を用意する場合にも、就業規則に内容を追加する必要があるため注意しましょう。
ポイント6.勤務者の健康と安全管理
会社は社員の健康管理や維持をする義務があるのですが、テレワーク勤務者の健康管理は難しい課題です。企業は社内健康診断を定期的に実施するのですが、常時型在宅勤務では受けにくいでしょう。そこで、自ら健康診断を実施したり、産業医による健康相談を義務づけたりするケースがあります。こういった措置を講ずる場合には、就業規則に内容を追加する必要があるのです。テレワーク勤務者の健康や安全管理のために、作業管理をすることも大切となります。長時間連続してパソコンの作業を続けることなどについて、新たに「VDT作業管理規定」などを作成する場合には、就業規則にその内容を追加します。
作業環境についての管理も重要であり、安全衛生法に適した環境であることが重要です。自宅での業務の作業環境について一定の基準などを定めるためには、就業規則に内容を追加しなければいけません。机や椅子、空調、照明設備などについて、細かな基準を設ける必要があるケースもあります。会社のほうで机や椅子を提供することもあるでしょう。ただし、プライバシーには配慮することも重要です。
ポイント7.情報セキュリティ
テレワーク勤務の場合、どうしても情報漏えいのリスクが生じてしまいます。そこで、まずは規定のルールに不備がないのか確認しましょう。資料の持ち帰りや漏洩防止のための情報管理などのルールです。そのうえで、テレワーク用の新しいセキュリティに関するルールが必要であれば、就業規則に内容を追加します。在宅勤務などの場合には、勤務者から情報漏えいが起きてしまうケースが多くなります。対策として、たとえば、テレワーク勤務に対応した情報セキュリティポリシーを新たに用意します。その内容は必要に応じて定期的に見直しすることも大切です。
また、テレワーク勤務者本人にきちんと情報の管理責任を自覚させて、自己点検させる必要もあります。これからテレワークに取り組む従業員への情報セキュリティや情報リテラシーに関する教育の実施も重要です。たとえば、研修を義務付けることを就業規則に盛り込むケースもあります。
まとめ
テレワークはオフィス勤務とは異なる環境で業務に取り組むことになるため、就業規則の見直しが必要です。たとえば、どの従業員にテレワークを認めるのか、勤務条件を明確にします。また、労働時間や勤務場所、人事評価制度などについても、テレワーク用の就業規則が求められるでしょう。テレワークのために新たに就業規則の内容を追加するならば、既存の就業規則に附則するか、テレワーク用の就業規則を新設するパターンがあります。また、変更された就業規則は所轄労働基準監督署に届け出なければいけません。しっかりと就業規則を適切な内容に整えることによって、企業と従業員の双方にとってのデメリットを取り除くことができます。