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テレワークガイドラインについてポイントを押さえて解説!

独立行政法人の中小企業基盤整備機構が調査した「中小企業景況調査」によると、中小企業の人出不足が現場で深刻な状況になっていることがよく分かります。調査結果によると、2009年から中小企業の従業員不足は進んでおり、2013年には製造業や建設業、サービス業といったすべての業種で従業員が不足していると回答した企業が不足していないと回答した企業を上回りました。そのような人手不足の現状を打破するための方法としてテレワークの導入が進められています。しかし、初めてテレワークを導入する企業のなかには、準備不足によって労働時間や安全衛生面でトラブルが発生しているのも事実です。そこで、厚生労働省はテレワークのガイドラインを作成し、中小企業に周知しています。人手不足に悩んでテレワークを導入する予定のある企業の経営者や担当者はガイドラインについて知っておく必要があります。この記事では厚生労働省が作成したテレワークのガイドラインについて、従来のガイドラインから変更された内容などのポイントを紹介します。

テレワークガイドラインとは?在宅勤務の広がりに合うもの

厚生労働省が作成したテレワークガイドラインとは、2005年に設けられた「情報通信機器を活用した在宅勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」を改定したものです。働き方改革の方針に照らし合わせて、普及しつつあるテレワークに沿った内容に改訂されました。テレワークとは、労働者がインターネットなどの情報通信技術を活用して事業場外勤務を行う形態で、大きなメリットとしては時間や場所に関わりなく勤務できることが挙げられます。在宅勤務もできるので子育てや介護などをしながら仕事をこなすことができ、これまで働きたくても働けなかった人も雇用できるのが利点です。

ただし、事業場外での勤務が前提となるので、経営側の観点からは労働時間の管理が難しいというという問題があります。一方、労働者としては仕事とプライベートの切り分けが難しく、長時間労働になりやすい点がデメリットとしてあります。慢性的な人手不足が続いていくであろう日本において、潜在的な労働者を雇用できるテレワークの普及は不可欠です。そのため、政府も対策に乗り出し、厚生労働省がテレワークに関する内容のガイドラインを発表しました。今後、テレワークを導入する予定の企業は、後々のトラブルを避けるためにもガイドラインを理解しておくことが大切です。

テレワークガイドラインの種類は自営型と雇用型に分かれる

改定されたテレワークガイドラインでは、テレワークを雇用型と自営型の2つのタイプに分けているのが特徴の一つです。自営型テレワークはクライアントから受けた仕事の注文に対して、情報機器を活用しながら自宅を含む事業場外でこなしていくタイプになります。自営型テレワーカーの最大の特徴は個人事業主である点で、会社に雇用されているわけではないので、社員としての在宅勤務には含まれません。フリーのエンジニアやデザイナーなどが対象になります。

一方、雇用型テレワークの特徴はその名のとおり、会社と雇用関係にある点です。そのため、雇用主は従業員をさまざまな面で管理する義務があり、企業規模や雇用形態によっては雇用保険に加入させなくてはいけません。また、雇用型テレワークには在宅勤務以外にもサテライトオフィス勤務やモバイル勤務といった形態もあります。サテライトオフィス勤務とは雇用した企業のメインオフィス以外の場所で働いてもらうスタイルです。在宅勤務やモバイル勤務に比べて作業環境が整った状態で仕事をこなしてもらいやすいメリットがあります。モバイル勤務はノートパソコンやスマートフォンなどを駆使して、勤務場所を必要に応じて柔軟に変えられるスタイルです。働く場所を変えることで、業務の効率化に役立ちます。

リモートワークは会社と雇用契約を結んだうえで、オフィス以外の場所で作業してもらうスタイルになります。そのため、雇用型テレワークの一種になるので、ガイドラインを読むときは対象となる範囲を間違えないように注意しましょう。

テレワークガイドラインが制定された背景!明確な制度が必要

厚生労働省は在宅勤務をメインにした「情報通信機器を活用した在宅勤務の適切な導入及び実務のためのガイドライン」をすでに2005年に公表していました。しかし、通信機器の発達や親の介護や子育てといった就労環境の変化によって、在宅勤務の形態も多様化しています。時代に合った労務管理が求められるようになったことから、ガイドラインの改定に結び付いたのです。改定前のガイドラインには在宅勤務という働き方こそ定義されていましたが、雇用型と自営型の明確な区分は存在しませんでした。そのため、雇用関係が曖昧な状態になるケースもあり、導入する企業側にとってもリスクのある内容だったのです。

しかし、ガイドラインの改訂によって自営型と雇用型の区分が明確になったことで、企業は安心してテレワークを導入できるようになり、テレワークの普及につながっています。総務省が調査した2016年の「通信利用動向調査」によると、テレワークを実際に導入している企業は全体で13.3%です。ただし、日本政府は将来的な労働者不足に備えてテレワークの導入率を2020年には、2012年の3倍にあたる3割程度まで引き上げたいという意向を示しています。一方、労働者側も自由な働き方ができるテレワークに意欲的なので、今後はテレワークのような雇用形態が広がっていくことが見込まれています。そのため、ガイドラインなどを改定して制度を充実させておく必要があるのです。

テレワークガイドラインで変更されたモバイル勤務について

テレワークガイドラインでは、雇用形態を雇用型と自営型に分ける以外にも新たにモバイル勤務について新たに定義されました。追記された内容としては、モバイル勤務でテレワークを行う際にも労働基準関係法令の対象になるほか、労働者と労働契約を結ぶ時に就業場所の明記が必要になった点です。労働基準法令には、労働基準法や最低賃金法、労働安全保険法などのすべてが含まれます。また、労働契約を結ぶ時にこれまでの賃金や労働時間とは別に、就業場所を明記することが求められるようになりました。

ただし、モバイル勤務の場合、就業場所を必要に応じて移動することも可能なため、就業場所を制限するような規則は好ましくありません。そのため、就業場所の許可基準を示すという条件は付きますが、「使用者が許可する場所」という形で記載することもできます。

テレワークガイドラインの労働時間に関する変更点について

テレワークでは通常の勤務者に比べて、雇用主が労働者の労働時間を把握しにくいという問題があります。そのため、テレワークガイドラインでは労働者の労働時間を適切に把握する責務があることを、雇用主側に再度徹底しているのが特徴です。労働時間管理については2017年1月に策定された「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に基づいて把握する必要があります。労働時間を把握する具体的な方策としては、「パソコンの使用時間の記録」が示されており、専用の労務管理ソフトを導入することも推奨されています。ただし、それらの導入にはコストがかかるケースもあるので、あくまでも自己申告制で対処したいという場合もあるでしょう。そのような場合でも、ガイドラインを考慮した方策を取ることが大切です。

また、テレワークならではの問題として中抜けの時間に対する扱いについても記載されています。特に在宅勤務ではプライベートな時間と業務時間の区別が難しいのが現実です。そのため、中抜け時間における明確な取り決めをすることがポイントだとされています。たとえば、「中抜けの開始と終了時刻を報告してもらい、休憩時間として扱う」という方法が挙げられています。休憩時間として扱う場合は、その時間に応じて始業時刻または終業時刻を調整するということになります。

テレワークガイドラインで変更された時間外や休日労働について

テレワークガイドラインでは、休憩時間や時間外、休日労働についても具体的に記載されているのもポイントです。労働基準法では休憩時間を労働者に一斉に与えることを原則としています。しかし、テレワークの仕組み上、労働者全員に一斉に休憩時間を取らせることは不可能であり、効率も悪くなるでしょう。そのため、テレワークガイドラインでは「労使協定によって一斉付与の原則を適用除外できる」と記載されました。また、突発的なアクシデントなどが発生して休憩時間中に雇用主が労働者を業務にあたらせた場合は労働時間とみなし、別途休憩時間を与えることも明記されています。

さらに、時間外や休日労働については「実労働時間やみなし労働時間が法定労働時間を超える場合、三六協定の締結、届出及び割増運賃の支払いが必要となる」と規定されました。また、「深夜に労働した場合には割増運賃の支払いが必要になる」旨も明記されています。ただし、いわゆる「事業場外みなし労働時間」の把握は難しいのが実態です。たとえば、雇用主からの許可なく労働者が時間外や休日労働を行い、かつ労働者から事後報告を受けなかった場合、労働時間の把握はほとんど不可能だといえます。そのため、「使用者からの強制や黙示の指揮命令がない」「雇用主が時間外労働を客観的に知り得ない」という条件がそろっている場合は労働時間とはみなされません。この場合は、たとえ時間外や休日労働を行っていたとしても、雇用主は割増手当などの支払いをする義務はなくなります。

テレワークガイドラインの長時間労働に関する変更点

テレワークでは情報機器を使用することで業務を効率化し、長時間労働の削減につながることが期待されています。しかし、それと同時に雇用主が労働者の労働管理が難しいことによって長時間労働の温床になる可能性も指摘されているのです。そうした問題に対処するために、ガイドラインでは4つの方法を導入するように推奨しています。1つ目の方法は「メール送付の抑制」です。休日、深夜など業務時間外に指示や報告のメールを送付しないように求めています。2つ目の方法は「システムへのアクセス制限」です。社内システムへのアクセスする時間を制限することで、物理的に時間外労働を抑制できます。また、情報セキュリティという観点から考えても有効な方法です。

3つ目の方法は「時間外や休日、深夜労働の原則禁止」です。雇用契約を結ぶ時点からはっきりと示しておくことで、長時間労働を防げます。4つ目の方法は「労働者への注意喚起」です。業務の都合によって長時間労働が発生しそうな場合や、実際に休日・深夜労働が発生した労働者に対して注意を促すと抑制に効果が期待できます。

テレワークガイドラインの労働安全衛生法に関する変更点

テレワークガイドラインでは雇用契約を結んだ労働者の健康を確保するために、「労働安全衛生法に基づいた措置を講じる必要がある」と記載されています。具体的には労働安全衛生法に記載されている「健康診断とその結果等を受けた措置」や「長時間労働者に対する面接指導など」です。つまり、労働者の健康に配慮するために健康診断の実施と結果の評価や、医療機関と連携することが求められています。

また、テレワークでは長時間机に座ったままの作業を強いられるケースが多いのも特徴です。そのため、労働者は腰痛などの症状を訴えることがよくあります。雇用主が業務のために提供している作業場以外で業務をしてもらう場合には事務所衛生基準規則や労働安全衛生規則に即した環境を保つことが重要です。厚生労働省が発表している「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」を参考にしましょう。

テレワークガイドラインを取り入れる際に注意すべき点

テレワークガイドラインは、テレワークを導入する際に頼りになる資料です。しかし、あくまでも業務がスムーズに進むためのガイドラインなので、強制力のあるものではありません。そのため、大切なことは「労使双方が合意すること」だといえます。テレワークを導入する前に対象業務や労働者の範囲、業務方法などについて労使委員会などで納得いくまで議論しておくことが重要です。いずれにしても、テレワークを導入することで業務が非効率になってしまっては意味がありません。業務が円滑に進むような方法を考えてから導入しましょう。

また、テレワークガイドラインを取り入れるときの注意点としては「業績や賃金、業務にかかる費用負担について明確にしておく」こともポイントです。これらの給料や費用にかかる問題は、トラブルになりやすいので気を付けましょう。特に費用負担については自宅を利用する場合に、プライベートの支出と業務における支出を区分けすることが難しいケースも考えられます。「一定金額までは負担する」などのように明確な規定を作成しておくことが望まれます。

リモートワークにはテレワークガイドラインを適用しよう!

リモートワークは会社と雇用契約を結んだうえで、オフィス以外の場所で作業してもらうスタイルになので、テレワークとの関係性が深いです。そのため、リモートワークを導入する場合にもテレワークガイドラインに沿った方法で行うことが求められています。そのためにはガイドラインをよく理解して就業規則などに反映させることが大切ですが、不安がある場合はリモートワーク情報サイトなどに登録して相談してみるとよいでしょう。

リモートワーク情報サイトには「ITやエンジニア向け」「Webに特化したサイト」などさまざまなものがあります。自社の業種に応じて適切なサイトに登録すると良いアドバイスをもらえることがあるのでおすすめします。

まとめ

リモートワークを導入することで、人手不足に悩んでいる企業の悩みを解決できる可能性があります。しかし、リモートワークにも問題点がいくつかあるのは事実で、それを解決するためにもテレワークのガイドラインに沿った就業規則などを定めておくことが大切です。テレワークガイドラインのポイントを理解したうえで、導入にあたって準備しましょう。また、準備をする過程で分からないことがあれば情報サイトなどに登録し、専門家に相談してみることをおすすめします。

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