リモートワーク部TOPリモートワークの基本知識テレワーク・デイってどういうもの?特徴や導入による効果は?

テレワーク・デイってどういうもの?特徴や導入による効果は?

2017年から実施されている「テレワーク・デイ」をご存じでしょうか。「言葉は聞いたことはあるけれど、実際にどんなものなのか、何をする日なのかは知らない」という人は少なくないでしょう。テレワーク・デイとは、「テレワークをする日」という意味で第1回目は2017年7月24日でした。テレワーク・デイが制定された背景や目的には、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックが関係しています。

ここでは、そもそもテレワークとはどういったものなのかという基礎知識をはじめ、なぜオリンピックとテレワークが関係あるのかを解説いたします。あわせて、テレワーク・デイへの参加方法やテレワークを導入することで得られる効果、メリット、課題点などもご紹介していきます。

そもそもテレワークとは?どういう働き方のことなの?

テレワークとは、ギリシャ語で「遠く」を意味する「tele」と、「働く」という意味の英語「work」を組み合わせた造語です。直訳すれば「遠くで働く」となり、会社が構えているオフィスなどから離れた場所で働くという意味になります。つまり、「出勤せず、時間や場所にとらわれることなく働くこと」を指す言葉です。1970年代から使われ始めた言葉ですので、意外と歴史がありますが、日本では誰もが知っているとまではいえないのではないでしょうか。

テレワークと似たような意味の言葉に「リモートワーク」があります。こちらは、英語で「遠隔」という意味の「remote」と「work」を組み合わせた言葉で、「遠隔地にいながら働く」という意味になるでしょう。情報通信技術の発達にあわせて使われ始めた言葉で、テレワークより新しい概念です。しかし、テレワークもリモートワークも「時間や場所にとらわれずに働く」という点は同じであり、決定的な違いというものは定義されていません。強いていうならば、目的の違いがあげられます。テレワークの目的は、第一に「出勤の負担を軽減すること」です。それに対してリモートワークの目的は「それぞれ遠隔地にいる人たちが、ひとつの仕事に取り組めるようにすること」であるといえるのではないでしょうか。

テレワークを導入することで、労働者は自分の都合に合う場所で働くことができるようになります。代表的なのは在宅勤務で、出勤時間をゼロにできるのが大きなメリットだといえるでしょう。企業としていきなり在宅勤務に切り替えるのが難しい場合は、サテライトオフィスを設置するという方法もあります。サテライト(satellite)とは「衛星」のことで、会社を本拠地として見た場合、そこから離れた場所に位置していることから名づけられました。この場合、住宅地や地方といった会社の本拠地から離れた場所に設けられたサテライトオフィスに出勤することになります。働く人は通勤時間の短縮が可能で、なおかつオフィスにある仕事に必要なツールを利用することができるというメリットがあります。

在宅勤務ともサテライトオフィス勤務とも違い、働く場所を定めないのがモバイルワークです。ノートパソコンやスマートフォンといったモバイル端末を使用し、好きな場所からインターネットを介して社内のデータにアクセスして仕事を進めていきます。そのほか、インターネット回線を利用してWeb会議をしたり、移動時間にメールや電話をしたりするのも、モバイルワークに含まれます。いずれも、情報を共有できるクラウド環境を整え、チャットツールなどを活用してリアルタイムに情報をやりとりしながら仕事を進めていくのが基本です。

テレワーク・デイってどういう日?いつ実施するものなのか

「テレワーク・デイ」は、総務省・厚生労働省・経済産業省・国土交通省といった行政機関が東京都や経済界と連携して展開する国民運動です。2017年にスタートし、2020年までの毎年7月24日を「テレワーク・デイ」と定めました。テレワーク・デイの当日は、参加企業・団体がさまざまな形でテレワークに取り組むことになります。当日は「交通機関の混雑がどの程度緩和されるのか」「都市部の人口がどのように変化するか」という調査が行われ、実際にどの程度の効果があるのかが公表されます。つまり、7月24日の1日限定で参加企業・団体にテレワークを実施してもらい、混雑緩和にどの程度の効果があるのかを確かめる日ともいえるでしょう。

テレワーク・デイが実施されるのは何のため?国が考えるねらいは?

日本では、2020年に東京オリンピック・パラリンピックの開催が決定しています。この世界的なスポーツ祭典の期間中、国内はもとより海外からも大勢の大会関係者・マスコミ・観光客などがやってくるため、主要開催地である首都圏の交通はたいへんな混雑が予想されています。このことから、国は「通勤しなくても仕事ができる」テレワークに注目し、東京オリンピック開催時の交通混雑緩和につなげたいと考えているのです。

こういった交通混雑の緩和を目的としたテレワーク化の取り組みは、すでに他国でも実施されています。2012年に開催されたロンドンオリンピックの際には、同じ理由から業務のテレワーク化が推進され、実際にロンドン市内の企業の約8割がテレワークを導入し、成功を収めました。2017年、総務省などはこうした成功事例を参考に、東京オリンピック開会式の予定日である「7月24日」を「テレワーク・デイ」と設定。来る2020年に備えた予行練習という意味合いで2017年から実施がスタートし、第1回目である2017年7月24日には、約950団体のあわせて6万3000人ほどが参加しました。

このときの参加団体は、地域は北海道から沖縄まで、業種は情報通信業・製造業・建設業など多岐にわたっています。結果的に、ピーク時間帯の地下鉄利用者が最大で10%減少、豊洲・浜松町・品川といったエリアでも人口が減少するなど、目に見えた成果を上げました。2018年には、さらに期間を延長して「テレワーク・デイズ」とし、7月24日から27日までの5日にわたって1682団体ののべ30万人以上が参加。東京オリンピックの主要開催地である首都圏では、広範囲にわたって通勤者の減少が確認されています。

テレワーク・デイによって得られる効果にはどんなものがある?

テレワークの導入による東京オリンピック開催時の交通混雑緩和は、行政や企業が協力して取り組むべき大きな目標のひとつだといえるでしょう。しかし、それだけが狙いではありません。国は、テレワークを国民一人ひとりの生活スタイルに合った働き方を実現する「働き方改革」の切り札としています。テレワーク・デイをきっかけに、個人のライフステージや生活スタイルに合わせた働き方が定着することを目指しているのです。東京オリンピックをきっかけとして、テレワークを導入した企業がオリンピック後もテレワークを活用することを長期的な目標としているわけですね。

東京オリンピックというビッグイベントを旗印に掲げたテレワーク・デイというきっかけがあることで、テレワークに関心を持つ企業は増えるでしょう。さらに、実際にテレワークを導入した企業や団体が東京オリンピック後も運用を続けることで、朝の通勤ラッシュの混雑が日常的に緩和される可能性が出てきます。満員電車に詰め込まれるストレスは、多くの人にとって悩ましいものです。通勤時間の長時間化が著しい首都圏では、時間の有効活用という点からも見逃せません。また、「通勤にかかるエネルギーや費用を削減できる」「ペーパーレス化が進む」といった経費削減・環境保護にもつながっていきます。

企業がテレワークを導入することによって得られるメリット

通勤時の満員電車に乗らずにすむなど、働く人にとってメリットの多いテレワークは、企業側にも多くもメリットがあります。2018年のテレワーク・デイズに協力した企業・団体へのアンケートによると、「移動時間の短縮」「生活環境の改善」のほか、「生産性の向上」に効果があったことがわかりました。その理由として、「通勤に当てていた時間を有効活用できる」「自律的な働き方ができる」といったことがあげられます。テレワークでは、働く場所や時間が自由になるぶん、タイムマネジメントが重要になってきます。それが、個人の時間管理能力や自律性の向上につながり、企業全体への利益ともなっていくのです。

さらに、見逃せないのは「人材を確保しやすくなる」ことです。高齢化による労働力の減少が叫ばれるなか、働く人材の確保はますます困難になっていくことでしょう。テレワークを実施すれば、介護・育児などで退職や短時間勤務を選択せざるを得なかった人たちが働けるようになることが期待できます。あわせて、身体に障害があり移動が困難な人たちにも働いてもらえるようになります。また、自然災害などで交通網が遮断され、出勤が困難な状況におちいったとしても、業務に与える影響を少なくすることが可能です。災害時における社員の安全確保といった観点からも有効でしょう。

加えて、「働きやすい会社だというイメージを持ってもらえる」こともメリットです。柔軟な働き方を導入している企業は、働く人のことを真剣に考えている先進的な会社だというイメージを持たれます。その結果、求職者から自社を選んでもらいやすくなり、高いスキルを持った人材が集まることが期待できます。

テレワークの導入で企業が考えなければならない課題とは?

テレワークには課題もあり、メリットばかりではありません。まず、テレワークを実施すること自体が困難な職種があることは事実です。たとえば、おもてなしをする接客業や飲食物を提供する飲食業、介護施設などにおける福祉業、病院などの医療がこれにあてはまります。農業や林業、漁業といった第一次産業もそうですね。働く人が現場へ出向く必要がある仕事は、テレワークが困難であるといえるでしょう。

また、一部のスタッフに向けてテレワークを導入した場合、これまで通りオフィスで勤務する従業員の負担が増える可能性があります。なぜなら、電話や来客の応対など、会社全体でこなすべき雑務を一部の人のみで請け負うことになるからです。こうした負担増に伴って不公平感が生まれてしまうと、労働意欲や生産力の低下につながりかねません。さらに、セキュリティ面も大きな課題です。テレワークは、ICT(情報通信技術)の活用を大前提としたものであり、ネットワークを介して個人情報や会社の機密情報をやりとりすることになります。

そのシステムにわずかでも穴があれば、情報漏えいにつながりかねないのです。テレワーク・デイに向けて試験的に導入する場合でも、セキュリティ面はぬかりなく整備する必要があります。

企業がテレワーク・デイに参加するにはどうすれば良い?

2018年のテレワーク・デイズでは、2018年4月20日から7月20日にかけての3カ月間、参加企業・団体の登録受付が行われていました。参加方法は、「テレワークを実施する」と「テレワークを応援する」の2種類です。このうち、「テレワークを実施する」ことを目的に参加する場合は「実施団体」と「特別協力団体」とがあります。「実施団体」は、参加人数を問わずテレワークを実施・トライアルする団体で、規模の大きくない企業も気軽に参加できるものです。「特別協力団体」には、「テレワーク・デイズの中で2日間以上実施」「7月24日に100名以上実施」「効果測定に協力可能」という条件があり、実績報告が必須となっています。

テレワークの実施ではなく、「テレワークを応援する」ことを目的とする場合の区分は「応援団体」です。応援団体は、テレワークのノウハウやワークスペース、ソフトウェアなどを提供する形で参加することになります。実施団体または特別協力団体とあわせて登録することもできます。2018年は、こういった内容でテレワーク・デイズのキャンペーンサイト(https://teleworkdays.jp/)にあるフォームから登録をすることが可能でした。今後も同様の募集が行われる可能性があります。そのため、テレワーク・デイへの参加を検討している企業は、「どういった形で参加したいか」「どんなふうに参加可能なのか」を決めておくといいでしょう。

まとめ

テレワーク・デイは2020年の東京オリンピック開催時における交通混雑の緩和を目的に制定されたものです。大会期間中、大きな成果をあげることを期待されているのはもちろんのこと、企業のテレワーク導入のきっかけともなります。セキュリティ面など課題は少なくないものの、実際に導入してみることが問題のあぶり出しや解決方法の発見につながるでしょう。新しいシステムだからこそ、実施してみて初めてわかることも多いのではないでしょうか。通勤の負担が減るのは働く人にとってうれしいことですし、企業にも生産性の向上をはじめ数多くのメリットがあります。

テレワークという働き方は国が推し進める「働き方改革」の一環でもあります。未来のビジネスを見据える企業として、これをきっかけにテレワークの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

この記事を書いた人
アバター

 
↑PAGETOP