リモートワーク部TOPリモートワークの基本知識在宅勤務も労働基準法の対象!就業規則で規定しておくことは?

在宅勤務も労働基準法の対象!就業規則で規定しておくことは?

人材不足を解消するために、在宅勤務を導入することが有効です。しかし、在宅勤務の導入を検討している企業の中には、「就業規則でどのような項目を記載しておけばいいの?」「就業規則に必ず規定しておくべきことって何?」といった就業規則をどのように更新したらよいのか悩んでいる経営者や人事担当者は多いのではないでしょうか。在宅勤務も労働基準法の対象ですので、必ず押さえておかなければならないポイントがあります。この記事では、勤務形態に在宅勤務を取り入れようとしている企業の経営者や人事担当者に向けて、在宅勤務導入にあたって必要な就業規則のポイントについて説明します。今回紹介する内容を理解して、在宅勤務をスムーズに導入しましょう。

在宅勤務者用の就業規則が必要な理由とは

「なぜ在宅勤務者用の就業規則が必要なの?」と思っている人もいるかもしれません。実は在宅勤務も社内勤務と同様に労働基準法の対象になるので、在宅勤務者にも就業規則が必要になります。また、厚生労働省がテレワークの導入の際に、専用の就業規則を規定するように定めていることも理由の1つです。テレワークとは、通信情報技術を利用して社外の場所で働く勤務形態のことで、在宅勤務やリモートワークが該当します。ただし、企業内にテレワーク勤務者が常時10人以上いる場合に、専用の就業規則を定めなければならないというルールであるため、逆をいえばテレワーク勤務者が10人未満の企業は必要ないということになります。

確かに、テレワーク勤務者数が少なければ専用の就業規則は必要ないのですが、将来10人以上雇う可能性があるならば、対象外であっても就業規則を定めておいて損はないでしょう。ちなみに、専用の就業規則を作成する方法に、既存の就業規則本体に付則するパターンと、別に就業規則を新設するパターンがあります。いずれにしても、就業規則で規定しておくべき内容は変わらないため、都合の良い方法を採用するとよいでしょう。

在宅勤務が許可される条件を規定する

在宅勤務者用の就業規則にまず載せておくべき点は、在宅勤務が認められる条件です。従来の就業規則には、在宅勤務に関する規定はないので、どういったときに在宅勤務が許されるのか記載しておく必要があります。なぜなら、在宅勤務が許可される条件を明確にしていない状態で、特定の社員に在宅勤務を許してしまえば、他の社員からも在宅勤務を希望する声があがる可能性があり、社員間で不公平が発生してしまうからです。したがって、在宅勤務は誰でもできるわけではなく、きちんとした条件があり会社から認められなければ在宅勤務者になれないというルールが必要ということです。

在宅勤務許可の条件として想定されるのは3点。1つ目は、育児や介護などやむを得ない事情により通勤が困難と認められる場合です。2つ目は、入社から2年以上や新入社員を対象としないといった入社から一定期間経過していること。最後に、在宅で行う業務内容の指定です。これは企業によってさまざまですが、例として情報システムの分析や企画書の作成などが考えられます。これら3点を明確にしておくことで、在宅勤務者と社内勤務者のバランスを保ったり、社内の不平等感を軽減したりすることができます。

勤務が許可される期間を規定する

在宅勤務がどのくらいの期間まで許可されるのかも記しておくことがポイントです。期間が決められていなければ、在宅勤務が許可される条件を1度満たしてしまうと、自由な環境を好みいつまで経っても社内勤務に戻らないという人が現れても不思議ではありません。いつまで経っても社内勤務に戻ろうとしない社員がいると、会社の業務に支障をきたす可能性が高くなるので、在宅勤務を許可するにしても、いつまでなのかを明確にしておくことが重要です。例えば、1カ月までと指定しておくことで、ずるずると延長される事態を防ぐことができ、社員が現場に復帰してくれないと悩むことがなくなるはずです。

また、期間だけでなく、期間中であっても在宅勤務が終了する規定を設けておくと、柔軟に対応することができるのでおすすめです。在宅勤務期間内であっても、通勤できる日があれば社内勤務に切り替えることや、会社から緊急で召集がかかったときは通勤しなければならない、本人が社内勤務を望んだら在宅勤務の許可を解除する、といった内容の規定を設けておくとよいでしょう。特に、在宅勤務をする必要がなくなったときに、期間内でも社内勤務へ変更できるようなルールを事前に作っておくことが必要です。

労働時間を規定する

就業規則の重要ポイントの1つが労働時間です。在宅勤務者はいくら自由に時間を使えるといっても、労働基準法の対象ですので、社内勤務者と同じように労働時間を定めておく必要があります。基本的には、会社は在宅勤務者の労働時間をその都度把握しなければならないのですが、会社の事情によって常に労働時間を把握することが困難な場合もあるでしょう。そのときは、3つの要件を満たすことが条件ですが、事業場外労働のみなし労働時間制の適用を検討することができます。

1つ目の要件は、勤務が自宅で行われていることです。そのため、業務をカフェや他の事務所で行っている場合は該当しないということになります。2つ目の要件は、勤務者が自分の判断による通信の切断を許可されていたり、電子メールなどによる指示に即応する必要がなかったりすることです。つまり、会社との通信手段に対して勤務者がある程度の自由を与えられていれば、要件に該当することになります。最後の要件は、勤務が雇用主の具体的な指示に基づいて行われていないことで、主な業務が勤務者の判断で行われる場合であれば3つ目の条件に当てはまります。これら3つの条件をクリアしていれば、事業場外労働のみなし労働時間制を適用することができるのです。

また、労働時間と同様に大事なのが深夜労働と休日労働です。勤務者とのトラブルの原因にもなるので、どのように労働をしたときに深夜労働や休日労働として認定されて手当が付くのかは明記しておくとよいでしょう。

勤務評価制度を定める

基本的には在宅勤務者も社内勤務者と同じように評価する必要がありますが、社内で不公平感が出る可能性もあるため、企業や職種によっては社内勤務者とは異なる評価制度を導入する必要がある場合も出てくるでしょう。在宅勤務の業務内容次第では、社内勤務者と同じように評価することは難しい場合もあるため、勤務者が納得するような勤務評価制度を就業規則で定めておくことをおすすめします。もし、社内勤務者と同じ規則で評価するのであれば、在宅勤務者と社内勤務者は同じルールが適用されることを記載しておきましょう。また、在宅勤務者と社内勤務者に別々の評価制度を適用する場合は、同じルールが適用されないことを追記しておく必要があり、具体的な規則も明記しなければなりません。

評価者は規則に則って評価する必要があるのですが、一方的に成果物を基に評価するのではなく、在宅勤務者の声も拾いながら評価をするようにしましょう。在宅勤務者の業務を評価する際は、タスク管理ツールを使って進捗管理をしたり、定期的に業務内容とその成果についてコミュニケーションツールなどを使って共通理解を深めることも重要です。

給与や費用の負担について定める

就業規則には、在宅勤務者の給与や業務に関する費用負担も決めておくとよいでしょう。給与は勤務者も重要視していることが多いため、「就業規則第○条(給与)の定めるところによる」など、はっきりとした給与額の根拠を定めておく必要があります。また、通勤手当や残業手当など各種手当の取り扱いの有無についても明記しておきましょう。もし、手当がある場合は勤務者とのトラブルを回避するために、支給する条件や額の根拠も定めておくことをおすすめします。

費用負担に関しては、在宅勤務者側の負担がある場合は規定で定めなければなりません。例えば、業務に使用するパソコンなどの端末や周辺機器を会社が貸与するのか、それとも個人で所有しているものを使用するのかといった内容です。他にも、通信回線の費用や水道光熱費など在宅勤務をする上でかかる費用は誰が負担するのかについても明記する必要があります。企業の中には勤務者が光熱費などを負担して、会社が手当として支給しているところもあるようです。お金はもっとも勤務者とのトラブルにつながりやすいため、根拠から金額まで明確に規定しておくことがポイントです。

社内教育や研修方法を考える

在宅勤務者の社内教育や研修に関する規則も定めておくことが重要です。社内教育であればOJTで直接指導することができますが、在宅勤務はそうはいきません。在宅勤務者には社内教育や研修の機会がなかなか与えられないため、在宅勤務者の中には能力開発などに不安や不公平感を感じる人も出てくる可能性があります。そうした勤務者の悩みを取り除くために、特別な教育機会の場を設けておくことが望まれます。ただし、在宅勤務者を対象に社内勤務者とは別の教育や研修を行うためには、就業規則にその内容を追記する必要があります。

また、福利厚生に企業内の施設の利用が含まれている場合は、在宅勤務者はその福利厚生施設を利用する機会が社内勤務者よりも少なくなるため損をするかもしれません。そこで、就業規則に定めることで在宅勤務者が損する分の代償措置をとることができます。社内教育の一環として、企業内施設の利用を福利厚生にしているのであれば、在宅勤務者にもメリットがあるように配慮しておくことが必要です。

安全衛生に配慮する

在宅勤務者は自宅で業務を行うとはいえ、会社は勤務者の健康に留意する必要があります。そのため、勤務者の安全衛生の観点でもきちんと規則を定めておきましょう。安全衛生で重要な項目は3つで、1つ目は健康管理についてです。在宅勤務者は、企業が実施する社内健康診断に参加するためにスケジュールを確保し出勤しなければならないので、社内健康診断を受けにくい傾向にあります。それゆえ、企業が社内健康診断とは別に健康診断の機会を作らなければならないのですが、在宅勤務者自ら最寄りの医療機関で健康診断を受信したり、産業医による健康相談を義務付けたりするには、就業規則にその旨を追記しておく必要があります。

2つ目は、作業管理についての規則で、VDT作業管理規程などを作成して就業規則に規定しなければなりません。VDT作業とは、コンピューターや監視カメラを用いた作業のことです。VDT作業管理規程は、業務者の疲労を軽減し支障なく作業を遂行できるようにすることを目的に作られ、ディスプレイ画面の明るさや周辺機器の騒音などさまざまな基準で定められています。最後の3つ目は、作業環境についての規則です。在宅勤務の場合は、自宅の作業環境が安全衛生法に適した作業環境でなければならないので、就業規則に自宅の作業環境の条件などの内容を追記しておく必要があります。作業環境を整えないまま在宅勤務を許可してしまうと、健康に害が出たり業務の進捗が遅れることもあるので、在宅勤務者の自宅の状況は確認しておきましょう。

労災を想定してルールを定めておく

これまでたくさんの規定を紹介してきましたが、最後のポイントは労災に関するルールです。意外に思う人もいるかもしれませんが、在宅勤務も労災保険の対象になります。そのため、在宅勤務時でも業務起因性や業務遂行性が認められれば、労災が適用されることを念頭に置いておきましょう。ちなみに、ベランダで洗濯物を取り入れているときやポストに郵便物を取りにいったときなど、私的なことをしているときにケガをしても労災は適用されません。

また、業務上の災害が起きるリスクを減らすためには、勤務場所を自宅だけに限定しておくほうが良いでしょう。なぜなら、サテライトオフィスやカフェなど自宅以外の場所を許可してしまえば、移動中にケガをする可能性があるからです。基本的に在宅勤務は自宅での勤務になるのですが、自宅以外の場所を認める企業もあるので、在宅勤務を導入するのであれば事前に自宅以外の場所を認めるかどうか、はっきりさせておく方が良いでしょう。

まとめ

在宅勤務を導入することで、人手不足の解消に役立ちます。特に地方の企業は優秀な人材を採用するチャンスを得られるでしょう。しかし、ルールをきちんと整備しておかなければ、在宅勤務者との間でトラブルが発生し、会社の業務に支障をきたすこともあるのです。したがって、企業と勤務者双方にとってデメリットが発生しないように、在宅勤務者用の就業規則を定めておくことが重要です。今回紹介した8つの就業規則のポイントを参考に、自社に最適なオリジナルの就業規則を作成してみましょう。

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