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テレワークの導入は企業にとってどんな効果が期待できる?

政府が推進する働き方改革に伴いテレワークを導入する動きが企業に広まっています。実際に、大手企業が在宅勤務制度を拡充したというニュースが記憶に新しいという人もいるのではないでしょうか。テレワークは時間や場所にとらわれない柔軟で新しい働き方で、具体的には、在宅勤務やモバイルワーク、サテライトオフィスなどを利用して仕事をすることです。テレワークは企業に多くのメリットが期待されるだけでなく、従業員や仕事を探している人にとっても、さまざまな可能性を広げる働き方として注目を集めています。この記事では、テレワーク導入が企業や従業員にもたらすメリットが知りたいという人に向けて、期待される具体的な効果について解説します。

日本におけるテレワークの導入状況とは

日本ではテレワーク推進に向けて追い風が吹いています。テレワークは地方創生、女性活躍、働き方改革など、日本におけるさまざまな課題の解決につながる働き方であるとして、政府が重要な政策のひとつに位置づけているためです。総務省「通信利用動向調査」(平成27年)によると、テレワークを導入する企業数は、年々増加傾向にあり、平成27年末ではテレワークを導入する割合は16.2%にのぼりました。

平成27年「テレワーク人口実態調査」(国土交通省)によると、全労働者数に占める「週1日以上終日在宅で就業する雇用型在宅型テレワーカー」の割合は2.7%です。2.7%と聞くとあまり普及しているように思えないかもしれませんが、テレワークには企業に属する雇用型と自営型があります。企業に属さずにフリーランスとしてテレワークをしている自営型も含めると、日本におけるテレワーカーは実際にはもっと多く従事しています。

企業にとっての効果1.人材維持や新規獲得につながる

テレワークの導入が企業にもたらすメリットの1つ目ですが、テレワークによって柔軟な雇用体制を整えることは、人材の確保や維持につながります。たとえば、育児や介護を要する家族がいる人の場合は、仕事との両立が難しくやむを得ずに退職するというケースも多くありました。しかし、テレワークによって在宅勤務が可能となれば、両立がしやすくなります。特に、女性の退職理由になりがちだった出産や育児というライフステージの変化にも柔軟に対応できます。こうした社員が退職せずに済めば、新たに中途採用などで人材確保する必要もなく、育児や介護の手が離れた後にふたたび出社が可能になることもあるでしょう。

また、テレワークという選択肢があれば、配偶者の転勤などによって遠くに引っ越す場合でも離職せずに済みます。テレワークは、基本的に自宅などでパソコンを使って勤務することになりますので、インターネットがつながる環境であれば海外からでも勤務可能です。逆にいうと、企業から遠くに住んでいる優秀な人材を国内外問わず、獲得できるチャンスも広がります。たとえば、地方の企業が、地方には少ない特定分野のスペシャリストや経験豊富なマネージャーを採用できる場合もあるでしょう。あるいは、育児や介護を理由に退職していた優秀な働き手を発掘できる可能性もあります。

テレワークの導入によって、柔軟で働きやすい環境を整えることで、引き続きこの企業で働きたいという従業員のモチベーションも維持しやすくなります。結果として、離職率が下がる、社内の雰囲気が活性化するといった効果も期待できるでしょう。労働人口の減少が叫ばれる中、特に中小企業では人材難が深刻化しています。テレワークの導入は、人手不足に悩む中小企業には大きな価値があるといえるのではないでしょうか。

企業にとっての効果2.コスト削減が期待できる

2つ目に、テレワークの導入は企業にとってコスト削減効果も期待できます。まず、在宅勤務やモバイルワークによって、複数の営業拠点の統合や廃止などを図ることができます。拠点の建設費だけでなく、人件費や光熱費といった拠点の維持費も不要になるため、企業にとっては大きなコストカットにつながるのです。また、通勤が不要になることによって従業員に毎月支払う通勤手当が不要になります。つまり、テレワークをする従業員の数が増えれば増えるほど、コストカット効果が高くなるといえます。

テレワークではテレワークをしている従業員とのコミュニケーションのために、オンラインのビジネスチャットやビデオ会議システムなどを使用するのが一般的です。こうしたツールは、テレワーカーだけでなく、国内外の支社に勤務している従業員との会議にも使用できるため、さまざまな出張費用の圧縮にもつながります。加えて、無料で使えるツールも多いため、高額なテレビ会議システムや電話会議システムなどをこうしたオンラインツールに切り替えていくこともコストカットになります。また、テレワークではオンラインでの文書交換が基本です。社内の書類をペーパーレス化することによる費用削減効果も期待できて、会議のたびに紙の資料を用意する手間もなくなるので人件費のカットにもつながります。

企業にとっての効果3.業務革新になる

3つ目に、テレワークの導入は業務プロセスの革新につながります。テレワークは基本的にインターネットを活用した業務となりますので、そのための体制整備が必要です。具体的には、紙で管理していた書類の電子化、クラウドサービス上での情報共有、Skypeなどを使ったオンラインチャットやウェブ会議の導入などを進めていきます。まったくの白紙状態から始めるのは大変かもしれませんが、こうした整備を行うことは、省略可能な業務や効率化できるプロセスの洗い出しにもなるのです。

たとえば、個人の引き出しに管理していた紙の書類をオンライン上で共有することで業務の可視化も進み、業務分担や引継ぎなどもスムーズになります。個人が蓄積しているノウハウの共有にもつながるでしょう。業務の可視化が進めば、業務のステイタスやプロセス、各担当者の業務負荷レベルも明確になります。さらに、遠隔地からでも本社の会議に参加できる、その場にいなくても自宅や出張先から資料が閲覧できるようになれば、効率的な調整が可能です。加えて、費用や出張の申請、承認もすべてオンライン上で行えるようにすればスピーディに業務が進むようになります。働き方改革によって残業時間の規制が厳しくなっている中、テレワークの導入によって、従来の業務がスリム化、効率化されるメリットは大きいといえます。

企業にとっての効果4.リスク分散につながる

テレワークの導入は、企業にとって緊急時のリスク分散につながるというメリットもあります。日本は世界の中でも地震が多い国として有名ですね。こうした災害発生時に従業員が複数の場所で勤務していることはリスク分散になります。テレワークでは出社することなく勤務場所である自宅が被害を受けていない場合、通常通り勤務できます。結果として、企業の事業継続や早期再開につながり、事業利益の損害を最小限にとどめることができるのです。災害発生時に、無理に従業員を出社させなくとも事業を継続できるというのも大きなメリットとなります。

あるいは、感染症が流行したというような状況であっても、在宅であれば他人との接触が少ないため感染するリスクが低く、社内でのウィルスの蔓延も防ぎやすくなります。天災はいつ起こるか予期することは難しく、被害の大きさも計り知れません。リスク分散のメリットを踏まえると、できるだけ早いうちにテレワークを導入し、従業員をテレワーク勤務に慣れさせておくことが望ましいでしょう。

企業にとっての効果5.ブランドイメージアップになる

時流に乗ったテレワークの導入は、企業のブランドイメージアップにもつながります。テレワークは従業員にも優しい働き方ですので、導入によって社会的に「従業員を大切にする企業」「働きやすい企業」としての認知度が上がる効果も期待できます。ニュースリリースやソーシャルメディアなどを通じて積極的に発信する姿勢も大事です。

従業員のワークライフバランスを実現する先進的な企業であるという良いイメージが定着すれば、新規採用の面でも有利です。また、テレワーク制度を選択できることで離職しなくて済めば、従業員の企業へのロイヤリティも上がり、業務へのモチベーションがアップすることも期待できます。モチベーションが上がれば業務のアウトプットが向上し、結果として企業の業績アップにもつながります。

従業員への効果1.ワークライフバランスが実現できる

テレワークの導入は従業員にもさまざまなメリットがあります。まず、ワークライフバランスの向上が実現しやすくなります。在宅勤務が可能となれば育児や介護などによって離職せずに済みますし、さらに短時間勤務と併用できれば仕事との両立も現実的になります。こうした一時的な理由でキャリアを途切れさせなくて済み、収入も維持できるのは大きなメリットとなることでしょう。

テレワークを導入している企業の中には、育児や介護といった特別な理由のある従業員に限定せずに在宅勤務やサテライトオフィスでの勤務を許可している例もあります。通勤時間の短縮や通勤が不要になることによって、その分プライベートの時間を捻出しやすくなります。また、テレワークには、周囲の話し声や電話などに邪魔されずに集中できるため、短い時間で高いアウトプットが出せるようになるという面もあります。結果として、家族との時間を増やす、自己啓発として英会話などを習う、趣味の習い事などに時間を使えるようなるなど、ワークライフバランスの向上の実現につながります。

従業員への効果2.希望に近い仕事に就ける

テレワークの導入は、住まいの近くに希望する仕事がない人にも大きなメリットをもたらします。親の介護や配偶者の転勤などで地方に住んでいるという人もいるでしょうし、自然が多い環境を好んで地方への定住を希望する人も少なくありません。しかし、日本では大企業のほとんどが都心部に集中しています。そのため、地方では希望するようなレベルの給与や業務内容の仕事が見つけにくい状況にあります。高い能力やスキルがあり就労意欲もあるものの、地方に住んでいるため通勤範囲内に勤務したい会社がないというケースの有効な解決法のひとつがテレワークです。

テレワークであれば、インターネット上でやり取りをして業務をこなすということも可能になるので、住む場所や就業場所の選択肢も大きく広がります。望むレベルの業務に就ける可能性も高まるでしょう。たとえば、語学堪能な人であればテレワークで翻訳業務を委託することもできますし、ウェブデザイナーやコールセンター業務もテレワークと相性の良い仕事です。また、障害などにより通勤が困難な人でも希望に近い就労を実現できます。結果として、都心の人口集中の緩和や、地方の活性化にもつながり、日本全体でみても大きな効果が期待できる働き方だといえます。

テレワークの効果を高めるために企業として工夫したいポイント

テレワークの効果を高めるためには、企業としてさまざまな工夫も必要です。最後に、テレワーク導入を成功に導くための3つのポイントについて解説します。まず1つ目に、テレワークの導入前後で効果測定を行うことです。具体的には、従業員満足度調査などを行うことや、出張する会議の数に変化があったのかなど、どの程度業務効率化が進んだのかを数値的に検証するようにしましょう。その結果、従業員満足度が向上していれば施策が従業員にとってメリットをもたらしているという根拠になり、離職率の低下や採用コストの圧縮にもつながります。

2つ目に、テレワークは段階的に導入するのがポイントです。特にペーパーレス化が進んでいない企業などの場合は、急にテレワークを全面解禁してしまうと対策や整備が追い付かず、従業員が疲弊してしまう恐れがあります。手順としては、まずはテレワークを全社内に導入することを社内のイントラネットなどを通じて周知徹底しておきます。そのうえで、テレワークが活用されそうな職種や部署などに限定して段階的に導入していくとスムーズです。段階的な導入の際に、改善点があれば随時反映していくと良いでしょう。

3つ目に、旗振り役として、経営層や管理職、人事部門が積極的に活用していくことも大事です。新しいことを始める際には、なかなか現場の従業員の意識改革が進まず、たとえ良い施策でも狙い通りに活用されないということも多くあります。経営層や各職場のリーダーである管理職、推進部門の人事などが積極的に活用し、成功例を示していくことも大切です。

まとめ

テレワークの導入は企業にとってさまざまな効果があるだけでなく、従業員にも大きなメリットをもたらします。つまり、企業と従業員のwin-winにつながる施策であり、ひいては企業の持続的な成長を促します。特に、競合他社に先駆けて自社でテレワークを実現していくことは、大きな価値があるといえるのではないでしょうか。

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