日本や海外でテレワークを導入し成功している企業を紹介!
育児や介護、健康問題などで在宅を余儀なくされる人の数は増えているといいます。そんな人たちの就業機会を拡大することができるとして注目を集めているのが「テレワーク」です。また、社員の個人的な問題解決策だけとしてではなく、企業にとってもコスト削減や離職率の低下、生産性の向上といったメリットがあります。時間や場所にとらわれない自由な働き方として、テレワークを導入する企業は増加の一途をたどっています。しかし、その一方で、テレワークについて不安を抱える企業担当者も多いでしょう。
こちらの記事では、日本や海外でテレワークを導入し、成功を収めている企業の事例を紹介します。規模や業態がまったく異なる企業の事例を参考に、自社のテレワーク導入の検討材料にしてみてはいかがでしょうか。
テレワーク・デイズとは?企業へ働き方改革をすすめる運動
「テレワーク・デイズ」とはオフィス以外の場所で働くテレワークの推進を図る運動のことで、2017年から2020年にかけて毎年実施される予定です。テレワーク・デイズ推進の背景には、2020年に開催予定の東京五輪・パラリンピックの存在があります。千葉の幕張メッセや横浜にある横浜国際総合競技場、さいたま市のさいたまスーパーアリーナなどは都心に通勤する人たちの通勤ルートと重なることから、オリンピック開催時の交通混雑が懸念されています。交通混雑を緩和するために有効と考えられているのがテレワークなのです。
テレワーク・デイズには、初年度の2017年度には約950団体、6万3000人が参加し、2回目となる2018年度には1682団体、延べ30万人以上が参加するなど、年を追うごとに規模が拡大されています。実際に、通勤ピーク時間の都市部の人口は通常よりも減少し、テレワークによる混雑緩和の効果が見られました。オリンピック開催期間中にテレワークを成功させた事例としては、2012年に開催されたロンドンオリンピックが挙げられます。ロンドン市交通局がテレワークの実施を呼びかけたところ、市内の約8割もの企業が協力し、混雑解消を図ることができたのです。日本政府としては、オリンピック後もテレワークを定着させることで、働き方改革を推進していく方針です。
企業にテレワーク導入が進みにくい理由で多いものは?
2018年にHP総研によって実施されたwebアンケートによると、テレワークを導入している企業は全体で25%にとどまり、メーカーでは28%、非メーカーでは23%という結果となりました。テレワークの導入に踏み切れない理由としては、回答の多い順から「テレワークに適した業務がない」「勤怠管理が困難」「情報漏えいが心配」などと続きます。メリットが多いように見えるテレワークも、安易に導入するとデメリットが生じるリスクもあるので注意が必要です。また、業種別にも違いが見られ、メーカーでは「テレワークに適した業務がない」が圧倒的に多く、非メーカーでは「情報漏えいが心配」が1位を占めています。
たとえば、社員がバラバラの場所で仕事をするテレワークでは、コミュニケーションが取りづらい、社員の就労実態が把握しにくいなどの側面もあります。上司の目が届かない環境下では、きちんとした評価が行われるかを不安に感じる社員も多いでしょう。また、社外で情報を扱う際には情報漏えいのリスクも高くなります。ウイルス対策ソフトの導入やパスワードの徹底管理などのセキュリティ対策を実施し、社員一人ひとりがセキュリティに関する意識を高く持つための徹底した教育や指導も必要になるでしょう。このようなテレワーク導入に対する不安を払拭するためには、実際にテレワークを導入し成果をあげている企業の事例を参考にするのがおすすめです。
テレワーク導入を進めるための対策!導入事例を参考にしよう
テレワークの導入を検討する際には、テレワークの導入成功事例を参考にすると安心です。まずは、テレワークに関する情報や事例をしっかりと集め、何が必要なのかを社内で話し合う必要があります。そして、本導入の前に一度試験的に社員が体験してみることも大切です。試験導入の間にテレワークのメリットとデメリットを把握し、本当に導入が必要なのかを検討することや導入時の課題を把握することができるでしょう。また、ノウハウがない中小企業に対しては、労務管理や人材活用の事例、運用ポリシーなどについて、総務省が指導してくれる働き方改革セミナーが全国各地で実施されているので利用するのもおすすめです。
他にも、企業に専門家を派遣してアドバイスが受けられる「テレワークマネージャー派遣事業」や、実際にテレワークを活用して実績を上げた企業が直接支援してくれる「テレワーク推進企業ネットワーク」などの支援制度も充実しています。
離職者対策に効果あり!株式会社はっぴぃりんくの事例
鳥取県にある株式会社はっぴぃりんくは、学習塾やウェブ制作などを事業展開している中小企業です。少人数の企業では人材の確保が課題となりますが、テレワークを導入したことで出産や育児、介護の際にも会社を辞めずに在宅勤務ができるため、同社では離職者の数が減るという効果が見られました。専門知識や豊富な経験を持っていながら、働く環境が整っていないことで仕事を辞めざるをえない人は多いといいます。
実際にテレワークを活用している社員の中には、以前働いていた広告代理店での時間・場所の拘束経験から、テレワークを選択したという人もいます。「自分で時間調整ができる」「子育てと両立できるので助かる」などの声もあり、優秀な人材の流出を防ぐ効果が期待されているのです。特に、出産や育児などで離職する女性は多いですが、これからの時代は男性が育児や介護に参加する機会も増えると話すのは株式会社はっぴぃりんくの藤原章江社長。誰もが「自由な時間に在宅で働ける」環境が用意されていることで、長期的にキャリアを積める働き方を模索できるのではないでしょうか。
ライフワークバランスに好影響!サイファー・テック株式会社
セキュリティ関連ソフトウェアの開発と販売を行うサイファー・テック株式会社は、東京都内と徳島市にオフィスを持つITベンチャー企業です。2003年に設立以降、なかなか人材の採用がうまくいかず、業績も横ばいという悩みを抱えていました。同社の吉田社長はもともと多趣味で、東京で生活していた際には週末に千葉まで通い趣味で稲作をしていたといいます。そこで、自分のように仕事以外の時間も大切にしたい人が働きやすい環境を整えたいと考え、2012年にサテライトオフィス、クリエイティブスタジオ「美波 Lab」を設立しました。
当初7名だった社員はテレワーク導入後2年で約4倍までに増え、採用力強化という目的が達成されました。テレワークスタッフの中には、猟や農業などの趣味を大切に働く人が多く見られます。その中の一人である乃一さんは、家庭の事情で前職を退職し、実家に戻ってきた後現在の仕事と出会いました。そんな彼女は、父親の影響を受けて狩猟免許を取得し、休日には父親と猟に出るのが日課となっています。また、海釣りや山菜採りなど、自然を満喫しながら趣味も謳歌できるとあって、テレワークのワークライフバランスへの好影響が注目されています。
web会議でコミュニケーション!株式会社ミズの事例
佐賀県にある株式会社ミズでは、2名の社員がテレワークを活用して働いています。テレワーク導入のきっかけとなったのは、ある妊娠した社員が仕事継続に対して不安を抱えたことだったといいます。企業にとっては、知識や経験のある人材は宝です。一人ひとりが安心して働けるように会社が変わる必要があるとの考えから、テレワーク導入へと踏み切りました。導入に際しては、情報通信技術(ICT)を活用したウェブ会議を推進し、業務内容もテレワークを前提に組み替えたといいます。
テレワークを実施していくうちに、社員と会社の双方にメリットがあることがわかりました。たとえば、以前は研修や会議のために遠方から通勤する社員の移動が負担となっていましたが、ウェブ会議を活用することで極力自宅や勤務地での参加が可能になったのです。はじめは一人の社員のためだったことが、社内全体にコミュニケーション改革をもたらした成功事例となっています。
実際に制度を活用している社員は、育児と家事の時間を有効活用して仕事ができる、時間に余裕が持てたことで気持ちにも余裕が生まれてきたなど、テレワークの大きなメリットを感じているようです。
成功の秘訣はコミュニケーション!Automattic社の事例
テレワークの活用が日本よりも積極的に行なわれている欧米で、アメリカ中小企業の成功事例となるのがAutomattic社です。2003年に設立されたAutomattic社は、世界でもっとも利用されているブログプラットフォーム「ワードプレス」を運営する企業です。本社はサンフランシスコにありますが、世界36カ国、320名以上の社員はほとんどがテレワーク勤務というから驚きです。同社人事部のロリ・マクリース氏は、テレワークであれば採用が地域で限定されないため、能力の高い人材を集めることができると語ります。採用時の面接も、電話やスカイプなどをあえて使用せず、テキストのみのチャットで行うという独自路線を貫いているのも注目に値するでしょう。
テレワークでは社員同士のコミュニケーション不足が懸念されますが、Automattic社ではオンライン上に社員が自由にチャットでコミュニケーションを取れる「ウォーター・クーラー」という場を設けることで解決しています。こちらのチャットルームでは、業務に関係のないことでも自由におしゃべりすることが可能です。また、同社では年に一度、会社が全費用を負担する「グランド・ミートアップ」が開催されており、1週間社員が共同生活を送ることで互いの絆を深めることに成功しています。フロリダやハワイ、ラスベガスなどのリゾート地で開催されるミーティングの後は、帰りの空港でハグをし合うほどの仲になる人も少なくないといいます。
Automattic社の事例には、働き方の変化という枠組みを超え、今後の企業のあり方を変えるヒントが詰まっています。
コスト削減に成功し注目!British Telecomの事例
イギリスのBritish Telecomは、ヨーロッパの中でもテレワークが進んだ企業として知られています。同社で注目したいのが、多様な働き方が選択できる点です。社員はオフィス勤務、モバイル勤務、フィールド勤務、ワークアバウト勤務などから自分に合った働き方を選ぶことができます。オフィス勤務は主に会社の1カ所のオフィスに勤務することを指し、モバイル勤務はオフィス勤務以外のすべての従業員のことを指します。また、フィールド勤務は多様な場所で仕事はするが在宅勤務はしない従業員など、働く場所の割合によっても細かく勤務形態が定められているのは珍しいでしょう。
イギリスでは中小企業の4割程度がテレワークを導入しているとされ、柔軟な働き方が浸透しているといえます。British Telecomもテレワークを導入することにより、ワークライフバランスの向上や、コスト削減効果を実感しているといいます。テレワークは、企業にとっても大きなメリットがある働き方といえるでしょう。
モバイル機器を活用!韓国のKorea Telecomの事例
韓国は電子政府ランキングトップクラスの国で、2010年から政府によるスマートワークを推進する動きが活発になっています。スマートワークとはテレワークと同義語で、時間や場所に拘束されないフレキシブルな勤務形態のことを指します。政府の目標としては、テレワークを導入する企業を増やすことやスマートセンターの導入・普及などが掲げられているのです。そんな中、韓国の民間企業Korea Telecomは、スマートワークをいち早く導入したことで知られています。
同社はすでに数カ所のスマートワークセンターを設置し、中には保育所などが併設されているセンターもあります。スマートワークセンターとは、業務に必要不可欠なネットワークシステムや情報通信装備、コンピュータ、また、電話やファックス、コピー機などの事務機器も完備した空間です。スマートワークセンターを利用すれば、通勤時間の削減や在宅勤務の課題ともなっている集中力の低下なども改善されると注目を集めています。また、移動が多い営業職やコンサルタント職にとっては、業務の拠点になるというメリットも見逃せません。特に、ICTインフラが強い韓国ではモバイル機器を活用したスマートワークが展開されているので、日本企業も参考にしてみるといいでしょう。
テレワークを導入し成功している企業を参考にしよう!
うまく運用できれば企業と社員にとってメリットの多いテレワークですが、デメリットを考えるとテレワークの導入に不安を感じる企業も少なくありません。不安を払拭するためには、テレワーク導入の成功事例を参考にして検討することがおすすめです。日本国内、海外どちらの事例においても、テレワークを導入した結果、業績がアップした、社員の働き方が改善されたとする企業はたくさんあります。それらの企業は自社の問題を明確にし、独自の工夫をすることによって成功してきたといえるでしょう。
それぞれの企業ごとに課題は異なりますが、企業規模の大小に関わらず、テレワークを導入してよかったという声が多くあるのも事実です。それでもまだテレワークについて不安があるという場合は、リモートワーク情報サイトに登録して相談してみるという方法もあります。
まとめ
自社でテレワークの導入を検討している場合は、すでに成功した企業の事例を参考にしましょう。実際に通信機器やシステムを活用し、運用がうまくいっている事例からは学ぶことが多いはずです。また、テレワークに関するデメリットをどう解決していったのかを知ることで、問題解決の糸口をつかむこともできるでしょう。